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鉄道セクターでは既存施設の利活用が眼目。新しい路線の整備は、道路インフラ整備との優先度から見て当面は見送るべきであろうが、鉄道輸送の利点(高いエネルギー効率、環境負荷の少なさ、大量輸送力、高速性等)に照らし、既存施設能力は最大限に引き出す必要がある。

鉄道旅客を再度呼び戻すには、なんと言ってもサービスの向上が第一であり、大都市部における高架化は優先度の高い案件として認識されるべきである。これによって高いフリクエンシーで使い勝手のよい時間帯のサービスが実現することが望まれる。またネットワークが単純であることから、バスと連携した幹線・フィーダーシステムの形成も課題である。

 

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2] 水運・港湾分野の統合的施策

この国の国土は南北に長く、海岸線も長い。南部及び北部には長大な河川があり、河川水運が隆盛である。海港は約100港あり、河川港は実態は正確には掴めていないが、主たる港は約30港、小規模な施設を含めると、総数は2000港に及ぶとも言われている。

行政体系はこの分野を二分しており、海運総局が国際及び沿岸海運を、内陸水路庁が河川水運を担っている。海運総局が管轄する海港のほとんどが実際には河川部に整備されている事もあって、水運全体の実体に鑑みればこの二つの行政機関の所掌は一体不可分とも考えられる。これら二機関の統合など、今後の改革が望まれる。

一方、海港においても港湾整備・運営主体が多岐にわたり存在している。国営港湾、市営港湾、民間ベースの港湾、さらには国軍経営の港湾までがそれぞれの利益を求めてしのぎを削っている。過当競争により余剰施設も発生している。強力な権限を持つ統一的な計画・開発主体の確立が必要であると思料される。

この国においては、未だ単体として利益の上がる港湾は数えるほどしかなく、地方中小港湾はその整備財源を安定的に確保することが困難である。ハノイ及びホーチミン両市周辺における大規模港湾における開発利益をうまく使用して地方港湾を整備する内部補助システムについて検討することも必要と考えられる。

 

3] 道路整備の効率的な実施

国道1万5千キロメートル、省道(県道にあたる)1万7千5百キロメートル、その他の道路合わせて約21万キロメートルの既存道路ネットワークがあるものの、舗装率は未だ低く、多くの古い橋梁は度重なる戦争の時代にはメンテナンスもなされず老朽化している。

一部の河川においては未だ充分な渡河施設がなく、非効率なフェリーに頼っている所も残っている。

今後は、交通需要に見合った自動車専用高速道路の段階的整備、大規模橋梁の架設、主要国道の高規格化、都市部のバイパス整備等まだまだ大規模な投資を要するプロジェクトが残っている。

 

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