日本財団 図書館


<寄稿>

 

ヴィエトナムの交通運輸

佐藤浩孝*

 

1. まえがき

私は1998年9月より2000年8月まで、JICA長期専門家としてヴィエトナム社会主義共和国の運輸開発戦略研究所へ派遣された。この間運輸政策・交通計画の分野で運輸交通省を初めとする関係者等に対して技術移転作業を試みたが、この過程において接した情報や、検討した結果を基に運輸サブセクター毎にこの国の交通運輸の状況と将来について所感を述べたい。

 

2. ヴィエトナム社会主義共和国について

ヴィエトナムという国は大きな国である。人口は8000万人弱であり、東南アジア各国の中においては、インドネシアに次ぐ規模である。また、国土面積は約33万平方キロメートルと、我が国の国土面積からほぼ九州の面積を差し引いた広さに匹敵する。

首都は北のハノイ市で、人口約300万人。南には国の経済の中心都市ホーチミン市(旧名サイゴン市)、人口約600万人を配する。

縦に長い国土(南北約2000キロメートル)を持ち、その国境は北から中国、ラオス、カンボディアに接している。長い海岸線を持ち、中部以北の国境部は一般に山地に位置する。

北にはホン(紅)河、南にはメコン(九龍)河をそれぞれ擁する肥沃なデルタ地帯があり、山がちで土地のやせた中部地域との対照をなしている。しかし人口は北部、中部、南部にそれぞれおおよそ三分の一づつ分布しているため、中部地方をいかに開発するかが今後の課題である。

都市部在住の人口割合はこの地域の他の国々に比べて格段に低く、全人口の20〜25%と推定され、7割を超す未だ生産性の高くない農山村部人口をいかに適切に他の産業に移転させて行くかが国家戦略として注日の的となっている。今後はバランスのとれた国土開発とともに、合理的かつ適切な都市化政策の実現が求められている。

 

3. 交通運輸の現況と将来の課題

1] 既存鉄道インフラの利・活用

越国の幹線鉄道ネットワークは全長約2000KM。ハノイ市とホーチミン市を結ぶ南北統一鉄道(約1700KM)を中心として北は2カ所で中国の鉄道とリンクしているものの、南のカンボディアとのリンクは未だない。ハノイ・ホーチミン間は最速列車で32時間かかり、毎日3〜4往復のサービスがある。その他中短距離都市間列車サービスがあるが、いずれも日に2〜3往復しか設定されていない。都市鉄道はまだ整備されていない。

1980年代には現状の2倍近い旅客を輸送していたが、その後道路網の開発に伴って、輸送量の激減を体験している。

ハノイ並びにホーチミン両大都市圏域内においては増大する都市交通との競合により昼間の到着・出発が制限されるようになって来ており、サービスレベルの低下は否めない。

 

009-1.gif

 

* 運輸省(国土交通省)東京航空局飛行場部長(前ヴィエトナム国派遣JICA専門家)

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION