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このようなことから、結論として、1]鉄道の果たす役割は大きい、2]多額の初期投資が必要である鉄道セクターへの公的セクターによる支援が不可欠、3]民間活力と公的支援を適切に組み合わせることが重要、であるといえる。

 

2. アジアの未来を担う鉄道のあり方について

 

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国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)

運輸通信観光社会資本部鉄道室長

ピエール・シャルティエ氏(Pierre Chartier)

 

道路が鉄道より低コストで整備できること等により、アジア各国においては、近年、道路整備の方が積極的に進められている。しかしながら、鉄道と道路のコスト比較にあたっては、環境への影響、交通事故による損失等も考慮した外部コストにも十分留意する必要がある。

今後、外部コストの低減、市場志向型サービスの提供、顧客のニーズヘの的確な対応等を図ることが重要であり、1]中国と東南アジア間の物流・人流のためのネットワーク構築、2]共通の技術基準の設定による国境間の物流の円滑化等が課題となる。

 

3. 鉄道分野における国際協力に関する運輸省の基本的考え方

 

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運輸省運輸政策局国際業務第二課長

尾沢克之氏(Katsuyuki Ozawa)

 

我が国は、環境への負荷が低い、大量高速輸送が可能等の特性を有している鉄道セクターへの協力をこれまで積極的に行ってきており、これら援助により種々のプロジェクトが各国で実施されているところである。

しかしながら、近年の厳しい財政事情を反映し、ODAに対する国民の目が厳しさを増している昨今、ODA中期政策、国別援助計画に準拠し、より効果的・効率的なODAの実施、顔の見える援助を実施していく必要がある。

運輸省としては、開発途上国のニーズを適切に把握し、国際機関との連携も図りつつ、我が国の有する技術・ノウハウを最大限活用できるような協力を実施していくことが必要である。

 

第2部 パネルディスカッション

 

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ナコーン・チャンタソーン氏(Nakorn Chantason)

タイ国鉄総裁捕佐

 

タイ国の交通政策

約4,000キロの鉄道網を有するタイにおいては、鉄道輸送のシェアが年々低下しているとともに、長期にわたる運賃値上げの凍結等により、国鉄の財務状況が極めて悪化している。

このような状況に対処するため、1998年11月にタイ国鉄の機構改革に関する内閣決議がなされ、鉄道インフラ所有者、サービス提供者、非鉄道事業者の3つに組織を分割する、いわゆる上下分離方式の採用が決定された。これを受け、タイ国鉄組織改革委員会が発足し、短期的財務分析を行うとともに、世界銀行による融資を活用して、本年11月を目途に具体的な方策をとりまとめることとしている。

 

 

 

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