4. 海外調査ニュース
●情報収集事業
調査団名 アジア・大洋州A班
調査分野 港湾
対象国 インド
調査期間(日数) 12.6.18〜6.28(11)
参加会員名 (財)国際臨海開発研究センター、日本工営(株)
目的・背景
インドは、核実験の実施により、有償資金協力やこれに直接結びつくような調査の新規案件については、現在採択されていないが、これらの制約も近い将来解除されることが期待されるほか、今後は制約のないマスタープラン的な調査の形成も考えられる。今回の情報収集事業はインド全体の港湾開発計画を把握するとともに、今後の施設の充実や新規整備が予定されるツチコリン港・チェンナイ港・エンノール新港などの主要港の情報収集を行なった。
調査概要
インドの主要港を監督する運輸省(MOST)を訪問し、コンテナをはじめとした全国マスタープランに関するヒアリングを行ない情報を収集した。また、MOSTと各港を管理運営するポートトラストの調整的な役割をしているインド港湾協会(Indian Port Association)及び日本側援助の窓口である日本大使館、JICA、JBIC等を訪問し、ヒアリングを実施した。また、ツチコリン港、チェンナイ港、エンノール新港の現況、課題、将来計画等を確認するため現地視察を実施した。
調査の結果と成果
1] 全国コンテナ港湾マスタープラン
現在インドの港湾に出入りするコンテナ貨物の約80%は、コロンボ港やシンガポール港を経由したいわゆるフィーダーサービスの貨物である。このような現状を踏まえて、インドの港湾が本船航路からサービスを受けられるよう整備されるべきことは、インドMOSTや各港湾管理者にも十分認識されており、本調査で示したマスタープラン作成の意義は充分理解されている。
今回調査団がTOR(案)で提案したような本格的・統一的なコンテナ港湾の調査はなされておらず、インド側はTORに十分な興味を示した。調査団としては、今後もMOSTとの連絡を密にして、必要に応じてTORの修正追加作業の支援等を行い、JICA開発調査の可能性を検討したいと考えている。
2] ツチコリン港
同港に関するプロジェクトは、第1段階として現有の港湾の増深プロジェクトと、第2段階として防波堤をさらに延伸して新たに大水深港を開発するアウターハーバープロジェクトに分けられる。第1段階に関しては、JBICベースの円借款供与を航路・港内浚渫に適用する可能性が想定されるが(JBICは同港への浚渫案件への供与実績あり)、すぐに我が国ODAプロジェクトに結びつくのは難しい状況も考えられる。また、第2段階の開発については、着手時期がかなり先になると想定されること、コンテナターミナル主体の計画であるため全国的なマスタープラン等による位置付けがないと大規模投資の正当性が検証できないこと、独自のF/Sが完了したばかりであること等から、近い将来我が国ODAプロジェクトとなることは難しい状況と判断する。
3] チェンナイ港
同ポート・トラストによれば、将来的にチェンナイ港は、インド東岸のHub Portとして機能し、コンテナをはじめとしたClean Cargoを中心に整備するとの事である。同港の当面のコンテナ需要は、コンテナバースの350m延長で対応するが、近年のコンテナ貨物の伸びを見れば、早急にコンテナバースの拡張が必要となり、今後日本の資金援助の対象としてJawahar Dockのバース利用の転用を踏まえたコンテナターミナル建設を希望している。
同港は将来的に石炭、鉄鉱石等のDirty Cargo Berthsをエンノール新港に移転させる計画を持っており、現在、エンノール新港第1期工事はほぼ完了に近づいている。
4] エンノール新港
同港はチェンナイ港の北側約20km地点にあり、操業中の火力発電所の石炭荷役を第1目標として建設されている。将来的には、石油、LNG等エネルギー産業工港として発展させていくことになっている。第1期工事はADB資金でほぼ完成しており、2つの防波堤に囲まれた水域より、更に陸側に第2期工事として掘込港湾を計画している。この第2期工事の資金ソースは決定しておらず、将来日本援助の可能性を残しているとの事である。従って、第2期工事の航路浚渫、埋立、更に内陸の基本港湾インフラ整備計画・工事への我が国からの支援については今後フォーローする必要があると考えられる。