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●情報収集事業

調査団名 中近東・アフリカB班

調査分野 港湾

対象国 イエメン

調査期間(日数) 12.9.25〜10.6(12)

参加会員名 (財)国際臨海開発研究センター、(株)パシフィックコンサルタンツ インターナショナル

 

JTCA情報収集調査団が港湾分野でイエメンを訪問するのは南北統一以来初めてのことである。南北イエメンに分断されている当時JICAによる開発調査が1983年に北イエメンのホデイダ港で行われ、我が国からのローン供与により、同港第7バースが1986-88年に整備されてからおよそ10年が経つ。その間に南北統一、内戦などがあり、最近国情が安定したこともあり調査を実施した。

 

港湾の概況

イエメンの港湾は運輸省の管轄であるが南北分割統治時代の影響で、大臣の直属組織としての2つの組織がそれぞれ旧北イエメンと旧南イエメンの港湾を管轄している。ホデイダ港とアデン港の2港がメジャーな港湾でありそれぞれのポートオーソリティが前述の2つの組織の中心となり他の港も含め整備、運営、管理を担っている。今回は、ホデイダ港とアデン港の現状を把握し、回復基調にある経済を背景にした両港の今後の開発動向と技術協力の可能性を探るために情報収集を行った。

イエメンの港湾政策はThe Yemen First Five Year Plan(1996〜2000)(新計画作成中)にインフラ整備の一貫として位置づけられており、両港の具体的なプロジェクトも明記されている。また、外貨獲得の手段として原油・LNGの増産・輸出に期待しており、民間投資による港湾施設を含む設備投資が促進されている。イエメンの港湾取扱貨物は一口で言えば生活物資の輸入、原油の輸出入及びコンテナ貨物の国際トランシップである。生活物資は石油製品を含め主にホデイダ港とアデン港の2港で取り扱われていて、原油の輸出はホデイダ港の北にあるラス・イサ港、原油の輸入と石油製品の移出は国営精油所のあるアデン港、トランシップコンテナはアデン港のアデンコンテナターミナル:ACT(PSAとサウジアラビア資本で1999.3運営開始)で取り扱われ、その他の港は生活物資の輸移入の補完と位置づけられる。

 

ホデイダ港

ソ連の援助で建設された港であり、首都サナアを始めとする人口集積のある西部高地地域への物資輸移入基地である。食料を始めとする消費物資、石油製品、自動車等を1999年で470万トン取り扱っている。日本が有償資金協力した第7バースを含め、2バースがコンテナターミナルとなっている。漂砂のため長大な航路と泊地の頻繁な維持浚渫が必要で現水深-10mの増加は困難である。経済の回復に伴い、イエメン全体の貨物量は増加傾向にあるが当港では取扱量は近年頭打ちとなっている。稼働率は良いため、施設不足と既存施設の老朽化によるものと見られ、今後以下の補修増強が必要と思われる。1]防舷材の交換、ガントリークレーンの更新等第7バースのリハビリテーション、2]アデン港との機能分担を考慮したマスタープランの見直し、3]新マスタープランに基づく第8バース以降への拡張、4]回頭泊地の拡張(オイルバースの沖合移設)(優先順位順)。

 

アデン港

長い歴史を持ち最大-16mの大水深の天然の良港タイプの港湾である。西南部地域を中心とする背後圏への消費物資輸入、精油所への原油輸入、製品移出、ACTでのトランシップコンテナの取扱で、1999年には191万トン(石油類除く)、770万トン(石油類)及びコンテナ8万TEU(2000には24万TEUの予定)を取り扱っている。公共岸壁(マアラターミナル)でのコンテナ取扱はACTにシフトして激減しているが、一般貨物についてはホデイダ港の容量不足があってか激増しており、ポートサービス船の老朽化もあり船待ちが激しい。今後以下の補修増強が必要と思われる。1]タグボート、パイロットボートの増強を始めとするポートサービスの充実、2]ホデイダ港との機能分担を考慮したマスタープランの作成、3]マスタープランに基づくマアラターミナルの拡張、4]マアラターミナルにおける荷役機械の増強(優先順位)。

 

全般

運輸省では大臣が対応し、日本に対する期待が感じられた。イエメンは港湾での資金協力の経験もあり、援助要請の手続きについてある程度の理解はしているようでホデイダ港のリハビリ、マスタープランスタディの要請を検討した事があることが判明した。しかしながら、要請の具体的内容については致命的な誤りもあるようで再検討が必要な旨を助言した。国際コンテナトランシップはACTが中心となるので、在来貨物や国内消費分のコンテナ貨物取扱施設の充実が喫緊の問題である。

 

 

 

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