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このうちもっとも大きな問題は1]で、これは国際河川としてヴィエトナム領内の航行は認められているものの、船主はいちいちホーチミンかハノイに出向いて、許可を取る手続きが旅費を含め1回に付き$300程度を要し手間暇を要することが障害となっている。これは商務省管轄の両国の通商協定に基づくものであるが、両国間のその他の社会経済問題のしがらみもあり一朝一夕に解決できる見通しにはない。3]についても、メコンの民の歴史的交流経緯もあって、どこにでも着桟可能な船がヴィエトナム間で内国水運的運行を実施しているものであり、何とも申し上げがたい。4]については安全航行上の観点からはその排除は議論のないところであるが、多大の経費を要するとともに水深から見て維持浚渫航路よりもクリティカルであるかとの議論からも早急に対処することは困難である。

次に純然たる内国水運であるが、これらの船はいわゆる個人経営船であり、日本の無償資金協力によるプノンペン市の日本友好橋の上流の河岸を繋船に利用している。ヒアリングによれば、雨季乾季等で航路は変更あるものの比較的定期運行を実施しているようである。これについても貨客統計等はない。

最後に旅客を対象としたスピードボート等であるか、プノンペンからシムリアップ(アンコールワット)、コンポンチャム間をそれぞれ5時間、1.5時間程度で結んでいる。高速艇は数十名乗船規模の長胴船であるが、シムリアップ航路は乾季にトンレサップ湖入り口が0.5m近くまで浅くなるため、小型船に切り替えている。また、シムリアップ側は雨季・乾季で水際線が大きく移動するため、高盛土された道路法面を利用する発着場は、5キロも移動することとなる。仮に固定桟橋を設けるなら乾季には盛土高8m近い5キロものアクセス道路付きの桟橋が、水路を設けるなら乾季には道路面から8mほど下ったところに乗船場がある長さ5キロにも及ぶ水路を要することとなる。

暴れ龍にたとえられるメコンを今は誰も力によって制しようと考えているものはいない。平野部のほとんどが氾濫原であり、メコンの恩恵とともに生きている現在、この国においては土木技術も自然に調和し、自然とともに歩んでいく道を更に模索すべきではないかと考えている今日この頃である。

 

基本数字

* 全国土面積:180,035km2、東西575km、南北446km、日本に比べると国土は約1/2

* トンレサップ湖:雨季面積約10,000km2超、乾季面積約2,600km2、ちなみに琵琶湖面積670km2

* 総人口11,437,656人(1998年センサス)女性の構成率51.8%、日本に比べると人口は約1/11、プノンペンの人口999,804人

* 人口密度全国平均64人/km2、プノンペン3,448人/km2

* 女性が世帯主である世帯比率:25.7%

* 人口の年齢構成

15歳未満 42.8%(15.6%)

15〜65歳未満 53.7%(69.3%)

65歳以上 3.5%(15.1%)

* カッコ内は参考として日本の数値

* 識字率(7歳以上)平均62.8%(男性71.0%、女性55.4%)

* 公共水道等安全な水にアクセスできる所帯比率29.0%

* 電灯普及所帯比率15.1%

* 煮炊きに薪を利用している所帯比率90.0%

* 敷地内にトイレ施設を有する所帯比率14.5%

 

 

 

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