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この合流点であるプノンペンの位置で雨季と乾季の水位差は何と約9mとのことである。ここから80kmほど上流のコンポンチャムというところで、ラオスに至る幹線国道7号線のメコン架橋(延長1,360m)を現在日本の無償援助で実施中であるが、この地点での水位差は14mに上るという。

道路も1号から7号のいわゆる一桁(番号)国道は、すべてプノンペン市を中心に放射状に伸び、地方都市、国境へと伸びている。しかし現在は川が制約となってプノンペン市は川に沿って南北に、そして西へと展開せざるを得ない。またこれらの河川の氾濫原に立地したことから、度重なる浸水対策として輪中堤が構築され、その内部約28km2が超過密状況にある。また北西南に伸びる一桁国道、鉄道敷だけは冠水しないように高盛土されていることから人々はその両側に柱を立て、高床式の住居を構えることになるから道路等の沿線にのみ高密度に人口が張り付くこととなる。

中心部の道路網はフランス植民地時代のものであり、プノンペンの発祥地であるワットプノンを中心に東西、南北にそれぞれ2本の平行幹線道路、そしてその間を放射状道路に環状道路が配されている。これらの主要道は舗装されているが、その他は現在ほとんど舗装が残っていない。

シクロ(自転車の人力車)のほか、小型バイクは免許不要のこともあり、経済復興とともに著しく増えている。公共交通機関としてマレーシア資本のバスが初乗り一人1,500リエル(2000年8月現在US1$=3,870リエル)と割高で市外接続バスとしてのみ存続しているのに対し、モトドップ(バイクタクシー、4輪の流しのタクシーなし)が市内は500から1,500リエルと割安で利便性が高く、営業免許、組合もないため公務員のアルバイト(ちなみに公務員の平均月給約15ドル、プノンペンでの生活には5人家族で200〜300ドルは必要といわれている)も多く巷間に溢れている。交通流動の有様はまるで遊園地の電動自動車乗り場のようである。事故もうなぎのぼりに増えつつあり、大型車と軽車両の混在事故は悲惨で大きな社会問題となっている。したがって問題点は以下のように要約される。

1] 中心部28km2の超過密地域交通対策

2] 道路等沿線住民の朝夕の中心部流出入交通対策

3] プノンペン市通過交通のバイパス方策

現在これらの問題を解決すべく東工大:屋井鉄雄先生を委員長とする作業監理委員会が設けられJICA開発調査「プノンペン市都市交通計画調査」が進められているところである。

カンボディアはメコン川、トンレサップ湖、サップ川、バサック川を中心に比較的大型船による内陸水運が発達している。これ以外にも多くの中小河川があり、雨期には平野部はほとんど冠水状態で、漁民、水上商売人はもちろん農民にとっても船が下駄代わりといってもよい状況である。

したがって内陸水運は、特に氾濫原に位置する地域では道路系等の整備が不十分である現在、水系に沿って季節的変動が大きいものの重要かつ非常に盛んであることは事実である。しかし相対的に小規模かつ自営業的に運用されていることからその実態は不明である。

前者の比較的大型船による内陸水運では、まず国際航路ではプノンペン市内にあるプノンペン港(乾季でも5m水深が確保できる延長300mの固定桟橋が日本の無償資金協力で整備されている。雨期には優に-13m岸壁に相当することとなる。)に国際河川であるメコン川を遡上してくる海運がある。残念ながら現在取扱貨物量は低迷している。原因として以下の要因が挙げられている。

1] ヴィエトナムにおける煩雑な通関手続問題

2] 違法伐採の社会問題化に起因する原木輸出禁止措置等による輸出貨物の減少

3] 港を利用しない中小貨物船との競合

4] 6隻の沈船障害物件を含む航路の維持管理問題

 

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ヴィエトナムとの間を往来する何処でも着桟可能な独航船

 

 

 

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