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3. 開発途上国の都市交通の現状と課題

―パキスタン―

 

本報告は、平成11年度JICA受託事業「都市公共交通コロキウム」研修参加者のレポートから抜粋し、作成したものである。

Mr. Muhammad Asif (パキスタン国イスラマバード企画開発局)

 

1. 現状

1998年2月に実施された人口統計調査によると、パキスタンの総人口は1億3,300万人で、増加率は2.7%であった。これには都市部の人口4,500万人(30%)と、地方の人口8,800万人(70%)を含む。都市部の人口増加率は3.5%、地方の増加率は2.2%であった。

パキスタンの人口は、ここ数年大幅な増加を記録している。人口の増加に従い、パキスタンの車両台数も急速に増加し、大都市で交通問題を引き起こしており、現実的で費用効率の高い方法による解決が求められている。

1997年までの自動車登録台数は412万台、その一方で路上を走る車の数はおよそ300万台である。登録車両の数字には、114万台の自動車とタクシー、13万4,000台のバス、14万1,000台のトラック、280万台のバイクその他の車両が含まれている。

主要都市は、カラチ、ラホール、ファイサラバード、ラワルピンディ、グジランワラ、ムルタン、ハイデラバード、ペシャワール、クエッタなどである。これらの都市の交通事情がおそまつなのは、関係当局による交通計画が貧弱で、交通管理に誤りが多いことが原因である。大都市における都市部の人口とその増加率を、以下に示した。

 

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独立当時のパキスタンの道路総延長は50,367kmで、うち舗装道路が9,809km、未舗装道路が40,558kmであった。過去50年の間に、道路の総延長は大幅に拡張し、パキスタンにおける現在までの道路総延長は205,805kmに達している(舗装道路が107,337km、未舗装道路が95,470km)。つまり、道路全長の増加率は400%以上であったが、舗装道路は10倍の増加となった。これは、パキスタンの交通システムにおいて、道路交通が極めて重要な役割を果たしていることを明確に物語っている。

道路密度は極めて低い。同じような地勢的条件や発展過程にある他の発展途上国の1km2あたり0.5kmという水準と比べ、パキスタンでは1km2あたり0.24kmに留まっている。交通システムの不足は、計20万km以上に達している。

現在鉄道は都市公共交通機関としては利用されておらず、都市間を結ぶ交通としてのみ利用されている。過去数年間、鉄道はかつてない交通量増加の中でシェアを奪還することができず、道路への交通需要のシフトが進んでいる。現在、鉄道と道路の交通量の比率は、5対95である。道路交通の増加に対して鉄道がその役割を発展させてこなかったことに原因がある。鉄道運営組織や鉄道システムは、機関車・客車・貨車の不足に悩まされている。時代遅れの牽引動力、老朽化した資産、貧弱な保守管理、低水準の投資、劣悪な管理、単線が原因の速度制限などが原因で、貨物輸送の増加率は、9.0%増の予想に対して5.99%減となり、旅客輸送も2.0%増の予想に対して1.7%減となった。

以下の表は、パキスタンの都市交通の現状を表したものである。

 

 

 

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