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まえがき

 

人口500万人を超えるヴィエトナム最大の都市であるホーチミンシティ(HCMC)における都市内交通は、急速な経済成長の下、バイクと自動車の混在する交通混雑が日増しに悪化しており、今後所得の増加に伴い、自動車の普及が加速されるものと考えられ、他の東南アジアにおける都市の例を紹介するまでもなく、更なる交通混雑は、騒音、排気ガスによる環境問題と相俟って市民の生活及び経済に大きな影響を及ぼすものと憂慮されている。HCMCにおける唯一の公共交通機関であるバス輸送は、市当局の低運賃政策により事業の経営状況が悪化し、輸送サービスも劣悪化し、利用者が減少するという悪循環に陥っており「市民の足」になっているとは言いがたい。

当協会は、平成12年度のセンター基金事業の一環として、HCMCにおける都市公共交通の整備を支援する目的で「マストランジット整備戦略」をテーマとして、HCMCにおいて、10月16日に、ヴィエトナム交通運輸省運輸開発戦略研究所と共催でセミナーを開催した。

同セミナーでは、東京大学家田教授から、「都市公共交通のあり方」について基調講演を頂いた。また、アルメック岩田代表取締役から、「HCMCにおけるマストランジット整備の戦略」と題してHCMCにおける都市交通の現状と将来、マストランジットの必要性と役割、整備の制約条件と可能性、今後の整備方策について調査報告を行った。

さらに、HCMC人民委員会、ヴィエトナム鉄道、交通運輸省の責任者より夫々報告発表がなされ、引きつづいて、家田教授の司会でパネルディスカッションが活発に行われた。

なお、開会式においては、交通運輸省ティエン次官がハノイからご臨席を賜り、セミナーをリードするご挨拶を頂き、また在HCMC林日本国総領事にはセミナーの意義を高く評価するご挨拶を頂いた。閉会に当たってはHCMC人民委員会ヴィエト副委員長からセミナーの総括とマストランジット整備の推進の決意が表明された。

在ハノイ日本大使館宮崎書記官はじめ、日本企業の駐在員を含む日越両国の関係者が多数参加して頂き盛会裡に終了した。現地のプレスにも大きく報道された。

最後に、本セミナー実施に当たりお世話になった日越両国の関係者の皆様に改めて深甚なる感謝を申し上げるとともに、セミナーを契機にHCMCにおけるマストランジットの整備が推進されることを強く望むところであります。

本冊子はセミナーの記録であり、出席されなかった関係者の皆様にも広く利用して頂ければ幸甚です。

 

平成12年12月

社団法人 海外運輸協力協会

理事長 山下哲郎

 

 

 

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