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シナリオ発生装置によりリアルタイムシミュレーション訓練を実施しており、飛行場管制とレーダー管制を統合した訓練も実施可能である。なお、ハノイACCでは、航空路レーダー管制とノイバイ(ハノイ)空港の進入管制(現在ノンレーダー管制)が同一の運用室で実施されているが、進入管制席を分離させて、同空港の管制塔に新たにターミナルレーダー管制所を建設中である。

ホーチミンACCは、建物は若干古いものの、機器システムは最新化が進んでおり、航空路レーダー管制業務、航空移動通信業務及び航空固定通信業務とも良好に実施されている。航空管制運用室には、管制情報処理システムが整備され、レーダー運用卓、飛行計画情報処理卓、統括管制卓とも十分な機能があり、さらに、統括席には航空交通管理情報機能が備わっている。また、ハノイACCと同様にシミュレーション機能を備えた最新のレーダー管制訓練装置が整備されている。

空港の管制官署に関しては、ノイバイ国際空港(ハノイ)では、管制塔の建物は古いものの飛行場管制用には最新の機器が設置され、タッチパネル式の切換装置を持つ通信システム(CCS)及び気象等情報表示システムが使用されている。

タンソンニャット国際空港(ホーチミン)では、管制塔は老朽化しており、飛行場管制室も狭く、一部旧式の機器が使用されている。進入レーダー運用室も管制塔ビルにある。管制卓は旧式のままであるが、レーダ表示器及び入力装置は、情報処理システムを備えたパソコンタイプの最新のものが設置されている。現在、管制塔は、エプロンのほぼ真ん中に独立して建てられているが、将来的にはターミナルビルに移転させ、その時点

で管制卓・機器装置を最新のものに更新させる意向である。その他、地方空港に関しては、施設も旧式で簡素なものが大部分であり、近代化が進んでいないとのことであった。なお、両空港とも、軍用機に対しても航空管制は民間側で実施している。

通信施設に関しては、各空港とも空港用VHF対空通信施設は備えられているものの、航空路用通信施設は整備が遅れており、HF通信施設の使用比重が大きい。

航空路施設としては、全国で、航空路用レーダー(ARSR/SSR)が3施設あり、その内、タンソンニャット空港のものは、レーダー情報処理機能(RDPS)付きでターミナル管制(TMA)用にも使われる。2000年末にはノイバイ空港に最新のRDPS付きレーダー施設(イタリア製)が開設され、全土がレーダーカバーされる。ただし、2つのACC相互にはシステム的な統合はされておらず、レーダーハンドオフは実施されていない。その他、VOR/DMEが4施設、DVOR/DMEが2施設(来年には更に2基新設)、NDBが22施設ある。ノイバイ空港、タンソンニャット空港にはILS施設(Cat-I)もある。

 

(3) 将来動向

南北に長い国であることから、南北間の交通手段として航空網の整備が期待され、空港、航空路ともに、今後は航空保安施設の整備、業務体制の改善が進められる計画である。具体的にはホーチミン新ACCの建設計画がある。現在、ハノイ及びホーチミン周辺で整備が先行しており、今後中部地域で空港の開発が進めば、国際航空路A1等航空路の要衝でもあることから、航空交通量も増大し、航空管制能力の向上が必要になる。また、南シナ海洋上の管制能力の向上(ADS*等CNS/ATMシステム**の導入等)も期待される。

国としての航空交通マスタープラン(VATM Development Master Plan)は策定されており、施設整備と必要な要員養成(技術と運用)への援助が日本に期待されている。

* Automated Dependent Surveillance (自動従属監視)

** Communication Navigation Surveillance/ Air Traffic Managcment (次世代の通信、航法、監視及び航空交通管理システム)

 

 

 

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