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次に試験後のシリンダライナーの摩耗を比較したのが図3.2.9である。

 

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図3.2.9 改善型スクラバーのライナー摩耗比較

 

スクラバー無しでEGRを実施した場合のシリンダライナー摩耗(TN5)は他のスクラバー有りに比較して摩耗量が多いのがわかる。運転時間が短いにも関わらず、差が出ているのはシリンダライナー摩耗に対しスクラバーの必要性を示す結果であると判断できる。

 

以上により、大型舶用ディーゼルエンジンが排出する排ガスに対して従来型スクラバーと改善型スクラバーを設計製作し一連の試験の結果、次の結論を得た。

1) 従来型IGSスクラバー、改善型スクラバーいずれも水滴捕集効率100%、SOx除去効率は98%以上で良い性能を有する。

2) ばいじん除去効率は従来型IGSスクラバーが12%程度に対し、改善型は70%程度で目標の50%を越える性能を確認した。また、

3) 改善型スクラバー後の排ガス中塩分濃度を測定した結果、1ppm以下で通常、航行中の吸い込み空気中の塩分濃度と差がない。

4) EGR連続運転によるリング・ライナー摩耗量にてスクラバーを評価した結果、EGR運転時にはスクラバーの装着が必須条件である。また、

5) 従来型IGSスクラバーに比較して改善型スクラバー使用時のピストンリング摩耗が少なくなる。このため、スクラバー新作時には改善型スクラバーの製作設置が望ましい。

 

3.3 成果の適用

大型舶用機関の分野もNOx規制が早晩、実施される段階にきている。その規制も年々強化されることは明白である。こうしたNOx規制強化に対してEGRの実船適用は避けられないと予測している。この場合に次のようにスクラバーを使用する。

(1) IGSスクラバー兼用の場合

現行IGSスクラバーのガス処理能力はEGR率15〜16%の容量と同一であるため、NOx発生量≧13g/kwhのまでの規制に使用する。但しエレメント間隔は9mmに変更する。

 

 

 

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