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3. EGRシステムの舶用化研究

 

3.1 研究の内容

NOx低減のキー技術であるEGRを大型舶用エンジンに導入するため、予測される汚れを防止し、発生するトラブルを未然に防止する技術として、タンカーのイナートガスシステムで長期間使用されてきたIGSスクラバーを、海水洗浄排ガス浄化装置として使用できる可能性や課題を研究することになった。

IGSスクラバーが対象としてきた排ガスは、数百ミクロンのばいじんが大半と言われているボイラー排ガスであるのに対し、数十ミクロン以下のばいじん粒子主体のディーゼル排ガスを対象にすると排ガス浄化性能上、種々の 問題が生じると考えられる。

そこで本研究ではNOx低減率50%が実現できるEGR率相当分のガス容量を前提にして、必要な浄化効率が得られる スクラバー開発を目指して次の項目を実施した。

(1) EGRの課題調査

(2) 大型舶用ディーゼルエンジンばいじん粒子調査

(3) スクラバーの原理とばいじん除去効率試算及び試験用スクラバー試作

(4) スクラバーばいじん除去性能改善法検討

(5) EGR評価試験法

(6) EGR燃焼試験及びスクラバー単体試験

 

3.2 研究の成果

3.2.1 EGRの課題調査

 大型舶用機関でEGRを実施する場合に問題が発生する主たる場所は、ピストンリング、シリンダライナ、ピストン棒、排気弁等の摺動部、過給機のタービンとコンプレッサー部の回転部等と予測する。本研究ではEGRの及ぼす影響が大きいピストンリングとシリンダライナに限定してEGRの影響度を文献調査した。

その調査結果の一例を図3.2.1に示す。*1

 

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図3.2.1 EGRとトルエン不溶分

 

EGRによりシリンダ油中に燃焼生成物の混入量が増加し、これがリング・ライナの摩耗を増加させる原因の一つになっていると予測される。EGRしない場合も排ガス中の煙が増加するとピストンリングの摩耗が増加するが、*2その原因は油中に研磨剤の役割を果たすカーボン等の燃焼生成物が増加するからである。この摩耗増加を防止する有力な武器がスクラバーの排ガス洗浄と考えている。

 

 

 

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