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一方、地球温暖化防止の観点からCO2の増加はいかなる理由があろうとも、もはや正当化されない趨勢となっている。ところが、一般的にNOx低減対策を施行すると熱効率が低下し、結果的にCO2発生量が増加する傾向が存在する。そこで、幾つかのNOx対策の中でCO2増加というペナルティが少なく、且つ経済性・安全性に優れているEGR(排ガス再循環:Exhaust Gas Re-circulation)方式の実用化が、重要な開発課題となってきた。

しかし、低質油を使用する舶用機関では、再循環ガスに含まれるSOxや燃焼残査によるピストンリング・ライナの摩耗、空気冷却器、掃気トランクの汚れ等が予想されるため、機関の信頼性・耐久性低下が懸念され、これが実用化の妨げとなってきた。

そこで、舶用実績のあるIGSスクラバを利用したガス洗浄装置を排ガス再循環ラインに組み込むことで信頼性・耐久性の向上を狙った舶用EGRシステムの試験プラントを設計・運転し、その技術的・経済的課題を抽出し対策を立案することで、トータルシステムとして舶用化の目処を立てることとした。これが本研究の2番目の目的である。

 

2. 大気汚染防止システムの調査研究

2.1 研究内容と得られた成果

「IMO MARPOL73/78附属書VI」の第13規則および「舶用ディーゼルエンジンからのNOx規制に関するテクニカルコード」(以下NOxテクニカルコード)の実運用は次の3つのステップに分けることが出来る。始めのステップでは、エンジン本体の認証が行われ、「エンジン国際大気汚染防止(EIAPP)証書」が発給される。次のステップでは、船舶の認証が行われ、船舶に対し「国際大気汚染防止(IAPP)証書」が発給される。最後のステップでは、第13規則が維持されていることが確認され、「IAPP証書」の裏書または再発給が行われる。

しかし、例えば海上公試時や通常運航時のNOx測定方法・装置、規制値を超えた場合の扱いや、経年劣化による変化の扱い、発効前の対応等、具体的に起り得る問題に対しては規制の内容が不明瞭であり、実際のエンジンや船舶の建造・運航にあたり解決しなければならない問題も多い。このため本附属書が発効した場合、運用に当たり混乱を来すことが予想される。

そこで本研究では、舶用低速ディーゼル主機関から排出されるNOxを対象として、附属書VIの実際の運用にかかわる問題点を技術的、経済的な観点から調査・整理することを目的として、以下に述べる研究を実施した。

 

2.1.1 「国際大気汚染防止(IAPP)証書」取得に関る手続・申請サンプルの作成

NOx排出に関係する書類の作成が要求されているが、記載内容については統一的な解釈は示されていない。しかし、関係者間の解釈の相違を避けるためには、統一された書式を用いることが極めて有効である。

そこでエンジンの機種やメーカの違いに関らず、どの機種についても不足の無い統一書式を目指し、必要書類の作成を行った。

 

2.1.2 運用シミュレーションの実施と検証

NOxテクニカルコード等には、NOx排出規制に適合していることを確認するための検査等が述べられているが、その詳細については決定されていない。

そこで、実機および実船を使用して、申請手続・証書の発給から就航後の検査に至るNOx鑑定作業を模擬実施(シミュレーション)し、その可否について確認し、問題点等に対する対応策を検討・整理した。

 

 

 

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