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6.2 双胴客船

双胴客船の損傷時復原性計算を行うためのコンピュータ・プログラムを開発し、2つの造船所の既存プログラムによる結果とクロスチェックを行うことにより、開発したプログラムの精度の確認を行った。

同プログラムを用いて、下記の4隻め内航客船(F〜I)および2隻の海外建造船(J〜K)についてSOLAS規則に基づく損傷時復原性計算を実施した。いずれの船型も双胴高速船型であり、比較的高い乾舷を持っているのが特徴である。

 

(F) 30m型純客船

(G) 43m型純客船

(H) 62m型旅客カーフェリー

(I) 72m型旅客カーフェリー

(J) 126m型旅客カーフェリー

(K) 56m型旅客カーフェリー

 

これらの船の結果は、(G)船を除くといずれの船も1区画可浸要件を満足することが確かめられ、(G)船についても小規模の付加工事で同要件を満足させることができることが分った。2区画可浸要件については、いずれの船も船首尾を除く区画では満足しないことが確認された。

また、(J)(K)の海外建造船についてはHSCコードによって建造されており、2区画可浸要件も満足していることが確かめられた。

 

6.3 半没水型双胴客船

他の双胴船とは大きく異なる復原力特性を有する半没水型双胴船については、損傷時復原性にも違いがあることが予想されるので、下記の3隻について試計算を実施した。

 

(L) 40m型旅客船

(M) 29m型交通船

(N) 63m型調査観測船

 

その結果、いずれの船型でも1区画可浸要件のうち、最終平衡状態における横傾斜角が7度以内という要件が満足できないことが明らかになった。この原因は、半没水型双胴船は波浪中での運動特性を向上せさるために、小横傾斜角における復原力を小さくするというコンセプトに基づいて考えられた新しい船型であることによる。10度以上傾くと復原力が急激に増加し、20度以上では復原挺が前節の高速双胴船以上の値となることが確認されている。これらのことから、残存復原性が十分にあることが確認でき、上述の最終平衡角の要件については緩和しても問題はないと考えられる。

 

7. 結言

SOLASII-1章第8規則で定められる旅客船に対する損傷時復原性規則を国内規則に取り入れるにあたっては、第8-3規則の2区画可浸要件を除いて適用すれば、単胴、双胴型客船ともに大きな問題は生じないことが確認できた。ただし、半没水型双胴船では、最終平衡状態での横傾斜角の要件を満足しないが、十分な残存復原性があることから、ある程度同要件を緩和することには問題がないと考えられる。

 

 

 

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