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次に、船首構造の圧壊及び船側構造の引張/折畳み破壊現象を簡易的に扱う近似解析手法を用いて、各種サイズの船舶が各種サイズのダブルハルタンカーの各種位置に衝突するシナリオに於ける緩衝型船首構造の採用効果(被衝突船保護効果)を概略把握した。その結果、緩衝型船首採用時の総エネルギー吸収量の増加及び油流出をもたらす限界衝突速度の上昇が、それぞれ約1.5〜3倍及び、約1.2〜1.8倍まで期待司能である事、従って緩衝型船首の採用が有意義である事が示唆された。緩衝型船首の設計指針は以下であり既存の建造技術を用い且つ、特段のコスト増を伴わずに実現化が可能であると考えられる。

 

(1) 通常荷重に耐える構造様式・構造寸法にする。即ち原則的に、船級協会規則を遵守する。

(2) バルバスバウの単位断面積当たりの圧壊耐力(圧壊圧力)を可能な限り低下させる。

(3) (2)を満たす条件下で、バルバスバウ断面全体の総圧壊耐力を可能な限り増加させる。

(4) (1)から(3)の要件を最も容易に満たすのは、外形状を扁平大型化して被衝突船の船側構造との接触面積を大きくする設計である。特に先端部分を尖らせないのが肝要である。

(5) バルバスバウの内部構造に横防撓様式を採用して、面外強度を維持しつつ船長方向圧壊耐力の低下を図るのも現実的で有効である。

(6) 横防撓様式を採用する範囲では、横防撓材を支持する水平桁及び縦通桁を配置する必要が生じる。この場合、桁付防撓材は船幅方向に平行に配置するとの配慮が望ましい。

(7) 対象が高速船型などの理由で外形状の扁平大型化が困難な場合には、代替案としてバルバスバウ基部の幅或いは深さを絞る等、バルバスバウ先端から離れた位置での断面積の縮小と横曲げ剛性が低下する様な配慮が望ましい。基部の幅が絞られない場合でも、バルバスバウの突出長さが大きい場合には実質的な横曲げ強度の低下が得られる。

(8) 喫水線上の船首形状・構造様式についても、被衝突船の船側構造上部との接触が予想されるので、バルバスバウ同様に尖鋭形状で強固な構造設計は好ましくない。

 

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図2-14 緩衝型船首構造の例(大型タンカー)

 

以上は、希な「衝突時の被衝突船保護」の観点を最優先した場合の設計指針である。現実には通常の航海時性能・オペレーションの便及び初期・メンテナンスコストなどを含む観点から総合的に最適化を図る必要がある。また、現時点での近似解析手法はバルバスバウの曲げ影響を織り込めないなど改善を種々要する段階にある。定量的で具体的な各種構造寸法・強度目標を具体的に確定するのは今後の課題である。

 

 

 

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