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(解説)

 

舶用ディーゼル機関(舶用DE)・システムの現状及び課題

奥村吉男

 

前書き(日韓産業界・造船業の動き)

韓国経済は、金融機関の多額の不良債権処理、自動車メーカーの再編・大宇自動車の倒産、現代建設の経営危機に見舞われてアジア金融危機後の順調な回復基調から異変を起こし、2001年のGDPの成長率も5%程度に減速する見通しという。新日鉄と浦項総合製鉄との資本提携など日本企業との提携、傘下に入る企業も増加している。

韓国造船大手4社の動向も、鄭一族支配から2001年初めに離脱することが確定した現代重工(含む三湖)、サムスン、10月新発足した大宇造船および韓進重工業は、ウォン安(1ドル=1,200ウォン台)の順風を受け、大型コンテナ船受注残をさらに積み増し、低レベルの船価状況、D/H規制強化に反応した欧米船主の発注意欲により、VLCC受注も高水準に推移し、同型船効果を発揮している。原油高による油田開発需要を反映したOil Rig受注、新規LNG船も追加受注している。主機・ディーゼル機関の生産能力は、HHIは約450万PS(発電機関を含む)、HSDエンジンは、約400万PS(2001年の生産目標)という。

2003年の船台を埋めつつあり、EU造船国が大宇、三湖を貿易障壁規定(TBR)で提訴したが、今後営業収益性重視、適正操業の経営に脱皮して適正船価受注・協調路線に転じると思われる。1$=1,200ウォン弱という為替は、資材費や労働コスト上昇傾向にあるので、11月以降の日本経済の、政局不安、大型不良債権発生が続いていることを反映した為替市場の円安基調、輸出の鈍化などの状況と、相対的な競争条件は大きくは変化していないと思われる。全体的には船価アップ傾向により採算は若干好転しつつあるので、無理な受注は差し控えて踊り場という見方もある。

日本の造船11社の2000年9月中間期連結決算も、黒字を確保したのは僅か2社に留まった。2000年の造船大手7社の受注量は11月までの累計で1,290万トンと、年間では1,300万GTを突破する(一方の韓国は1〜9月ロイド統計では、受注1,751万GT、建造量974万GT、受注残2,940万GT)。船価レベルは若干の回復基調にあり2003年までの適正操業率を確保し、最悪期は脱しつつある。MEPC45回でシングルハルタンカーの前倒し削減案もまとまり、新たな需要も発生している。

輸出企業を中心にリストラが先行した企業は緩やかな景気回復過程にあるが、バブル崩壊のツケが大きかった内需関連のリース、公共事業の長期的縮減が待ち受けて、巨大な不良債務の減免措置を受けているゼネコン、地価下落の不動産、流通関係業種等の国内産業は不振であり、大手銀行の不良債権処理は一向に減少する様子はない。連結決算制度、退職給付債務引当不足の償却および減損会計の導入など企業経営は2002年にかけて転換点に立っている。

造船事業は、日韓2強並立時代が今後数年間続きそうである。今こそ大手各社(具体的にはKHIとIHIの造船部門分社化と統合、MESの業務提携、及びNKKと日立造船の造船部門の分社化・統合)は、金融・製造業で広範に進んでいるライバル企業との業務提携、事業撤退、分社化・業種毎の企業統合に倣って抜本的な事業再編、スピード経営を進めて欲しい。

 

※ シーテックエンジニアリングサービス(株)

 

 

 

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