図8 ユーザビリティテスティングの状況(被験者がリモコンによってビデオを操作している。観察者はこちら側からその行動を観察し、記録している)
ユーザビリティの評価には、その他にも、インスペクション法という、ユーザビリティ評価者の直感にもとづいた手法なども開発されており、開発ステージや製品の特徴によって使い分けられている。いずれにしても、デザインしたものを評価し、それを再デザィンのためにフィードバックすることが最重要な点であるため、現場では、あまり長い時間をかけることは困難である。
人間中心設計の考え方を分析する手法としては、HQLの委員会が開発したCOEDAなどがある。この手法は、まずカードマッピングの手法によって様々な活動(ユーザの観察とかプロトタイプの構築など)の名称が書かれたカードを大きな台紙の上に配置してゆく。次に、それらのカードの間に時間的な流れを矢印で記入し、さらに各カードに、その活動に参加している人々(エンジニア、デザイナなど)を記入する。最後に、ユーザがどの活動に参加しているかを記入する。以上の説明から、この手法がISO 13407の要求事項に対応していることは明らかであろう。この手法では、こうした自由描画的なデータを所定の書式に転記し、その書式の比較によって企業間、事業所間の人間中心性の比較分析を行う。また、特定の企業や事業所についても、反復的デザインの実施や学際的なアプローチの程度、ユーザ参加の程度を診断することができる。
これらの手法を活用することによって、ユーザ工学を実践し、ユーザビリティ水準の高い製品の開発につなげてゆくことが、特に今後の日本企業においては強く求められているといえるだろう。もちろん、船舶に関連した製品、あるいは船舶そのものについても、こうしたユーザビリティの観点は必須のものになるはずであり、ユーザ工学の早急な適用が必要である。