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1.6 運航安全管理に関する調査研究(RR79)

機関部関係の「事故・トラブル・故障及びヒヤリハット」と人的要因に関するアンケート調査について、アンケート対象者を船舶運航に携わる機関長及び機関士とし、日本船舶機関士協会、日本旅客船協会の他、日本船主協会、日本船長協会の協力のもと、大手船社3社を通じて実施した。収集された事例は475件あり、これらを再整理した結果、384件が解析に有効な回答と判断し、解析を行った。

人的要因に起因する事故・ヒヤリハット事例のうち、作業者の管理体制が関与するものが約40%、作業特性及び環境条件が関与するものが約30%であったことから、作業管理システム、作業環境を重点的に改善することが、事故・ヒヤリハットの発生を減少させるのに効率的であろうと考えられる。そのためには、ソフト・ハード両面からの対策が必要である。

ソフト面からの対策としては、教育訓練、管理、作業環境の改善等があげられる。技術・能力、経験不足及び慣れによる事故・ヒヤリハット事例が多かったことから特に教育訓練は重要である。教育訓練により、技術・能力の向上と安全意識を啓蒙することによって、技術不足や慣れによる事故の軽減が期待される。内航船においては、少ない乗組員数、高齢化、航海・停泊時間が短い等、船内だけでは対処できない難しい問題を孕んでいるが、陸上支援の強化等管理・作業環境の改善に努力する必要がある考えられる。ハード面からの対策としては、操作部・表示機器の集中配置、監視機能の強化、自動化、機器のモジュール化等の対応があげられる。

一例として内航船の運転誤操作では、主機と並んで発電機が多かったが、入出港を多く繰り返す内航船では、確実に発電機を操作できるシステムが人的要因による事故を防止するうえで効果があるものと考えられる。

 

1.7 国際会議等出席

情報の収集並びに我が国の意見反映を図るため、IMO等の国際会議[IMO総会、海上安全委員会(MSC)、海洋環境保護委員会(MEPC)等計13会合]に延べ49人出席した。

 

2. 国内規則に関する調査研究

2.1 船舶の確率論的安全評価方法に関する調査査研究(RR 42)

船舶ばかりでなく原子力システム、航空などをはじめとして多くの安全性評価がなされている。しかしながら、安全性評価は極めて困難で、多くの安全基準は重大な事故に関して分析評価し、国際的国内的合意を得て達成してきたことは否めない。近年、国内・外の双方において、安全基準の客観性、透明性、また、それらの根拠を説明するため、安全性の客観的評価が求められるようになってきた。

これらを背景として、我が国でも検討を開始すべく、本研究部会(RR 42)は平成7年度から11年度まで5ケ年をかけて実施された。確固たる研究手法も、また統計解析に不可欠のデータも不明のため、前期3年間で研究をとりまとめ、研究手法等についての確認を行い、その後の2年間でより詳細な検討を行うこととした。

当初の研究計画は、現状の事故データ、シミュレーション計算などを用いた確率論的評価手法(PSA: Probabilistic Safety Assessment)であり、具体的な計算対象船舶を設定し、その安全性の度合いを数学的統計的に算出でき、また、装備基準により安全性が変化することを、現在までの経験に照らして妥当に評価できるか検討した。具体的には、データ入力から、損傷規模推定、損傷船体の経時変化、仮想現実感システムを利用した避難シミュレーションまでの各モジュールとデータを組み合せてMSES(Marine Safety Evaluation System)(図2、3)としてシステム実装し、国際航海旅客船に対して計算を実施した。

一方、本研究が開始されたころからIMOを中心としたFSA(Formal Safety Assessment)の議論が具体性をもってなされるようになり、タンカーや客船のヘリコプター離着陸施設などに対して各国で試適用されるようになり、具体的なFSA手法の検討に入っている。

 

 

 

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