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図2 避難シミュレータの構成

 

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図3 MSES全体構成

 

このような状況に対し、IMOでの議論に関して本委員会で調査検討し、我が国の対処方針設定などのサポートを行うこととなった。FSAは安全性基準を中立公正客観的に設定する手順である。本研究で当初目指したPSAはあくまでデータやシミュレーションによる数学的な取り扱いで客観的に評価結果を得ようとするのに対して、FSAは現実に直面して多くの専門家判断により基準設定の道筋を構築するものである。IMOには、本委員会委員がMSCに我が国の試みとして実施したPSAについて紹介するなど、貢献をしてきた。

さらに、平成9〜11年度の3年間では従来RR 73として行われてきた貨物倉火災の確率論的検討についても、手法的に類似であることから、本研究の中で行い、成果はIMOのFP小委員会にも提出されている。

本委員会は、1]PSA手法の具体的適用手法、必要なデータや計算手法などの検討により今後の安全性評価手法のあり方を示した。2]IMOにおけるFSAの議論については、調査検討を行い基準策定の手法としてその意義を見出すことができた。また、3]貨物室火災についても、具体的な確率論的安全性評価手法の検討を行った。本研究はこの分野のまとまった初めての試みであり、運輸省海上技術安全局安全評価室の設置や今後のRR 49(船舶の総合的安全評価に関する調査研究)の構想にも幾分かの理論的根拠を与えることができた。

 

2.2 内航船の満載喫水線に関する調査研究(RR 45)

内航海運の効率化を図る観点から、平成7年7月に船舶安全法上「限定近海船(概ね距岸100海里以内を航行する内航貨物船)」に係わる新基準が設けられたが、多数の内航船が限定近海船に該当するためには、満載喫水線基準の見直しが不可欠であり、また、内航海運業界からの要望も強いことから、内航船の満載喫水線の基準について、船型、航行実態に即した合理的な基準とすることを目的として、平成8年度から4ケ年計画で調査研究を行った。

主な作業としては、日本近海の波浪の特性についての調査、現行内航船の実態調査、水槽試験による船体応答計算法の妥当性の検討、海水打ち込み荷重の推定法の開発、海水打ち込み荷重の長期予測法の開発を行い、これらの結果をもとに、近海区域を航行する貨物船のうち、比較的本邦に近い水域(概ね距岸100海里以内)において本邦各港間のみを航行する船(限定近海船)に対する満載喫水線基準策定のための検討を行う上で、船舶の安全性に係わる様々な要素を考慮しつつ日本近海の海象条件を基に現行基準の相対的な評価を行った。これにより、限定近海船の満載喫水線基準を策定する際の基礎資料を得ることができた。

 

 

 

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