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緩衝型船首構造については、昨年度行った、衝突に関する研究のレビュー、衝突船の船首部形状・構造様式/寸法の調査及びバルバスバウ部の圧壊強度解析に引き続き、VLCCと大型船との衝突シミュレーション、船首構造の許容・必要強度の算定、船首構造破壊挙動及び船側構造破壊挙動の簡易推定式の開発及び緩衝型船首構造の試設計を行った。

油タンカーの仮想油流出量等の見直しに関しては、BLG 3において、MARPOL 付属書1/新19規則"Accidental outflow performance"案として、油流出の危険性評価の計算方法とクライテリアが暫定的に決定された。この規則案は全ての油タンカーに適用する方針であるが、暫定クライテリアは、5,000 DWT未満が数値的検証が実施されていないこと、及び5,000 DWT以上の油タンカーに対しては、検証されているものの、箱型模型に簡易化したモデルに基づいたものであることに鑑み、新19規則案に基づき、近年日本で建造された実際の船舶を用い規則の妥当性に関し、検証を行い、クライテリアの修正案を作成し、コレスポンデンスグループに提出した。

 

1.5.2 汚染分類の見直し

現在IMOのばら積液体及びガス小委員会(BLG)では、GESAMPの化学物質のハザードプロファイル(HP)の見直しに基づき、汚染分類の変更の検討を行っている。GESAMPで再評価した65物質のハザードプロファィルに基づく汚染分類の変更によるケミカルタンカーの操作、構造に影響する可能性があるので、以下の検討を行った。

オランダ修正案をもとにHPの見直された65物質について、5分類法、3分類法におけるGESAMPのハザードプロファイル変更の汚染分類への影響を調査するため、データベースを作成した。このデータベースをもとに、残液排出や構造に影響を与える可能性のあるもの、評価が厳しくなる可能性のあるものをピックアップするため、現行5分類法における汚染分類の変更がどうなるか、A類物質(Col.Bが4以上)、B類物質(Col.B=3)、C類物質(Col.B=2)、D類物質(Col.B=1)、無害物質(その他)として分類変更を調査した。次に、新規5分類法及び3分類法でA(X)類物質(Col.B=5、Col.Aが4以上で、Col.Bが4、又はCol.Aが4以上でCol.Bが3以下でもCol.FにRemarkのあるもの)、B(Y)類物質(Col.B=3、又はCol.B=4以下で、Col.Aが3以下)、C(Y)類物質(Col.B=2、又はCol.Aが1以下で、Col.Aが4以上)、D(Y)類物質(Col.Bが1以下でCol.EにS又はF及びCol.FにRemark)、D(Z)類物質(Col.B=1等)、無害物質(その他)として分類変更を調べた結果、アクリル酸等汚染分類が厳しくなるもの(特に船型が変わる可能性のあるもの)で多量に輸送されているものについては今後見直し物質が増えるに従がい、該当する物質も増加することが考えられるので、注意する必要があることが分った。

 

1.5.3 有害船底塗料の使用規制に向けた検討

現在、IMOでは、有機錫系船底防汚塗料の使用禁止のための新条約の策定に向けた作業が進められている。第21回総会で(1999.11開催)では、次の内容の総会決議が採択、合意された。

1] MEPC(海洋環境保護委員会)は、緊急案件として、有機錫系船底防汚塗料を2003年1月1日以降、船舶に新たに塗布することを禁止し、2008年1月1日以降、船舶に塗布されていることを禁止するための世界的な法的拘束力のある枠組み(条約)を策定すること。

2] 各国は、防汚塗料の評価手順を開発し、社会や環境への影響を検討し、さらに防汚塗料の環境への影響に関する科学的・技術的な研究を促進すること。

3] 有機錫系船底防汚塗料の、世界的禁止を達成する条約を採択するために、2001年に外交会議を開催すること(合意)。

一方、船底防汚剤の評価、選定基準の検討のため、有機錫代替物質の選考基準に対する考え方及び船底防汚剤の海洋影響評価手法についての検討が行われた。具体的には、海洋環境影響評価試験を実施するに際して必要となる極微量分析法の開発及び特定の化学物質の安定性に係わる試験を実施した。

 

 

 

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