日本財団 図書館


小型船では局部強度の要求で寸法が決まり、縦強度には余裕がある。40KDWT以上の比較的大きなタンカーでは、ZactとZreqはほぼ等しい。小型船もZreqの85%が崩壊強度に対する安全率LOを与えるとすると、フランジ面積の最大の衰耗率を27%(局部衰耗限界相当)とするときの安全率1.0のZactは次式から求まる。

(1-0.27) x Zact>0.85 x Zreq

したがって、Zact/Zreq>1.16であるならば、最大衰耗に対しても縦強度を確保できる。データのばらつきを考慮したとしても、船長L=130m以下ならば縦強度は確保できるので、縦強度評価要求から130m以下の船は除くことが出来る。

 

2.4 強度評価

以上の3条件を満たす老朽油タンカーは、強度評価を要求されるが、計算そのものは容易なものである。既に決議A.744(18)のESPで強制化されている定期検査の板厚計測結果を利用して断面係数を行うことが要求される。ただし、ロンジと板材との隅肉溶接は有効な状態であることが前提とされている。もし、衰耗により隅肉溶接が健全でないなら計算された断面係数は意味を持たないので、強度評価は無効となる。強度評価は、計算された断面係数がルールで規定している要求断面係数の85%以上であることを確かめることになる。

 

2.5 まとめ

標準的な満載状態及び軽荷状態をとる限りにおいては、船級協会が指定する局部衰耗限界値に達する衰耗がすべての部材に生じている極限状態においても、主船体の縦曲げ最終強度は一定の安全率を維持している。ただし、自由な積付けをおこなうことにすると、最大縦曲げモーメントに対して一定の安全性を確保する必要がある。最大縦曲げモーメントに対して主船体縦曲げ崩壊強度が一致する衰耗の限界は、断面係数に換算してルールでの要求断面係数の80%内外である。従って要求断面係数の85%が縦曲げ強度の限界を与えると考えれば、主船体縦曲げ強度を管理することが可能となる。

(本稿は平成11年度の日本造船研究協会基準研究成果報告会における講演に基づいております。)

 

お知らせ

 

研究成果報告書について

 

(社)日本造船研究協会では終了したRR研究およびSR研究の成果報告書を、会員、関係者等に配布すると共に、広く成果を活用して頂くために成果報告会での一般公表用に利用しております。平成11年度は下記の成果報告書を作成しました。

 

RR研究

RR73 防火に関する調査研究(SOLAS(3)-2章総合見直し) H7.4〜12.3 研究資料No.246R

RR42 船舶の確率論的安全評価法に関する調査研究 H7.4〜12.3 研究資料No.247R

RR45 内航船の満載喫水線に関する調査研究 H8.4〜12.3 研究資料 No.248R

RR46 放射性物質の海上輸送の安全に関する調査研究 H8.4〜12.3 研究資料No.249R

SR研究

SR234 船舶のカーゴセキュアリングシステムの研究 H9.4〜12.3 研究資料No.425

SR236 振動予測技術の高度化に関する研究 H9.4〜12.3 研究資料No.426

SR237 高度工作精度管理技術に関する研究 H9.4〜12.3 研究資料No.427

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION