日本財団 図書館


エンジンタイプ16V595(出力3,500kW〜3,900kW)は40台が販売されている。1163シリーズは116台が運航に供されており、高速フェリーにおいて850,000時間を超える運航実績を蓄積している。近年、MTUは1163シリーズの改良に力を注ぎ、シリンダライナー、燃料噴射装置、シリンダヘッド等の部品の改造を実施してきた。

この10年間、高速船に関し、搭載重量、速力、長さ、出力に対する要求値が増大してきている。経済的に魅力のある航路に効果的に船舶を就航させるには、100mを超えるカタマラン型や120mを超えるモノハル型の高速船の出現が期待される。これらの船舶は、45ノット以上の運航速度を確保するためには30,000kWを超える推進力を必要とする。このクラスの船舶の主機は、4基のディーゼルエンジンで構成されるシステムが市場を支配し続けるものと見られる。さらに高い40,000kWを超える出力の要求に対しては、ディーゼルエンジンとガスタービンの組み合わせが経済的と考えられる。

今後の推進システムの最も重要な事項は、高い信頼性、高い活用性及び低いライフサイクルコストさらに環境規制要件への適合である。

また、今後は、設計・供給・統合・アフターサービス全てについて責任を負う完成引き渡し方式推進システムの提供が増加していくと予想される。

以上のような高出力の要求の高まりを背景とし、またライフサイクルコストを大幅に低減するため、MTUは新しい8000シリーズ8を開発した。

 

(同社のエンジンシリーズについては、「第II編 欧州の主要メーカーの動向」を参照)

 

3. 高速フェリーの機器信頼性問題

日本でも高速旅客船の機器故障(主に主機関連)が問題となっているが、Conference“Propulsion 2001:High Speed Tech”において、New Orleans大学のDr Inozuが、高速フェリーの機器信頼性の問題について講演を行った。この講演では、高速フェリーの機器故障が他の船舶に比べて際立っている(全事故の80%が機器関連(通常の船舶は40%))ことを故障実例を示しながら紹介し、高速フェリー業界にとって必要な取り組み方向を提示した。取り組み方向としては、機器の信頼性向上に焦点を当てたシステマティックな努力が必要であり、最近、GE、ソニー等先進的企業で導入されているSix Sigmaに相当する保守整備の実施を提案し、そのために必要となる業界横断的な機器性能データ交換の必要性を述べた。(講演論文の概要は資料別添1)

 

8 2000年9月ハンブルクで開催された国際海事展「SMMハンブルク2000」で発表された。同年10月現在、4台販売契約済み(100数十メートルのプライベートヨット(フランスで建造中)向け。販売第一号。)であるほか、12台の販売契約交渉中。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION