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別添1

 

-Propulsion 2001の講演論文より-

高速フェリーの機器信頼性問題(概要)

Dr.Bahadir Inozu and Engin Heriscakar, University of New Orleans, USA

 

・はじめに

この10年間高速フェリー産業が急激に拡大したが、これに並行して高速フェリーは、設計者が速度と搭載重量を同時に増加させてきたことから、多くの問題を経験した。高速フェリーのトラブルでは、一般船に比べて、機器故障が際立っている。高速フェリー産業においては、全事故の80%が機器関連といわれている(その他の商船では40%)。

成長産業では、最低ラインを念頭においた保守整備戦略の最適化による利益の最大化において、機器信頼性への集中がキー要素になってきている。信頼性と保守整備の継続的な改善が企業戦略に不可欠になってきている。企業内の情報の共有が改善の過程を急激に加速する。機器性能の数値データのベンチマーキングが最適化過程のキー活動になってきている。

 

・機器故障

エンジン故障の割合が高い。高速フェリーに搭載される高速エンジンは、出力/重量について高い比率を実現するため、過酷な条件を強いられる。その結果、高い応力がかかり、低速、大型で重いエンジンに比べて故障しやすい傾向がある。

10隻を超える高速フェリーを10年以上運航しているある運航者の機器故障のほとんどは主機故障の関係である。この運航者は機器故障が非常にコストがかかることに気づいた。彼らは製造者の勧告に厳格に沿った保守整備方針を持っているが、いくつかの問題はそれでは解決できないものがある。この運航者は他の高速フェリー運航者と経験を分かち合うことを開始し、情報交換が非常に有益であることを発見した。彼らは問題のいくつかは(製造者はそのエンジン特有なものと言っても)特有なものではないことに気づいた。彼らはこの協力を拡大し、さらに多くの他の高速フェリー運航者と機器故障情報を共有したいと考えている。

保守整備方針を改善するためには、故障の根本原因が解明されるように故障機器の検視を実施することが肝要である。分析結果に基づき、信頼性改善のため勧告と行動計画を立案できる。

ある運航者は、製造者の不適切な保守整備要件が故障の根本原因であると言う。ある専門家は、製造者の保守整備要件の基本となるテスト台での試験は実際の使用条件とはかなり異なると指摘している。機器故障が起こった場合、運航者、機器製造者、造船所及び設計者は、通常対立するように思われ、現在のところ、お互いに非難し合い、彼らの間にフィードバックがない。我々は、彼らが機器故障情報を共有し継続的な機器信頼性の改善と保守整備方針の向上に協力することは関係者全員にとって有益であると考える。これは、win-win提案である。

根本原因分析のためには、データの保存・収集が重要である。現在、運航者は計画保全システム(PMS)やEnterprise Resource Planning System(ERP)を使用しているが、これらは根本原因分析に必要なデータフィールドを持っていない。それらは、通常、故障を簡単に記録するメモを持っているが、共通の故障原因の特定、故障平均間隔等のキー性能指標の計算、会社所有の船団や産業横断の機器性能基準の作成、並びに、機器故障の財政影響の明確化に必要な構造が欠けている。

 

 

 

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