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- 所要時間の短縮と旅客設備の高度化についての競争条件。

- 旅客/乗用車・貨物車の両市場への参入による収入の極大化。

統合は大抵の場合、より大規模で業績のすぐれた企業が競合企業を買収する形で実現している。この統合の傾向はまだある程度進む余地がある。多数の競合オペレーターがひしめいている航路がまだいくつもあり、各航路における統合の後は、三国間航路事業の増大と欧州域内航路をまたいだ統合の進行の可能性が高い。これまでに統合が最も進んだのは一般に北部ヨーロッパの大規模航路であるが、今後は引き続き地中海で急速に進むものと思われる。一方、全欧州規模の統合はなお今後の課題である。

ヨーロッパのフェリー業界においては三国間航路事業の増加が今後の大きな展開となるのはまさに明白である。個々の運航船社について見れば、Sea Containersは従来から世界のオペレーターという自己認識で、自国発着の航路にとどまっていないし、Stenaも三国間航路に進出している。一方で強豪のP&Oでさえ英国航路のみに活動を限定しているという状況もある。

しかしギリシャ関連航路向けに過剰建造に陥ったと見られる(それにもかかわらずドイツにさらに4隻を発注した)Atticaは、他の航路にも進出しようとヨーロッパの各水域を物色中である。1地域のオペレーターが他地域の市場に参入するのは容易なことではない。進出先の地元の事情に不案内で、また別の言語を話さなければならないという不利を負うからであり、地元のオペレーターを買収して進出する例が多いのはそのためである。

ギリシャでは民営化の影響が最近、市場を動かす要因として顕著である。民有化、そしてその結果、特にアドリア海航路の大手オペレーターの株式時価総額が2倍に急騰したことにより、各船主は船隊近代化のために増資ができるようになった。民営化が実現した大抵の市場で見られたように、この段階の後、強者が弱者を買収する形で統合が進んだ。

ギリシャにおける企業統合は内航交通権(カボタージュ)法の」一時的な傘に護られて進行している。オペレーターは、2004年に予定されている内航交通権撤廃の脅威を跳ね除けようと、地歩を固めている。ギリシャに保護の延長が特別に認められたのはフェリー部門の重要性のためであり、この保護延長は単に船主に自己防衛の機会を与えただけでなく、近代化とヨーロッパ域内の他市場進出の機会をも与えるという効果をももたらした。その進出に当たって最初のターゲットと目されるのは、TransmediterraneaやTirreniaなど、今なお国有の西地中海のオペレーターで、両者は民有化が迫られている有力企業である。

統合の進行により、近代化の進んだ企業組織間の競争が促進され、スピード、質などの一層の向上を求める利用者の要求への対応の改善がもたらされている。

統合により航路合理化と大型船投入の条件が整った。北部航路における構造改善はなお継続され、また今後の合弁事業や合併へ向けての話し合いも継続されている。

アイルランド海の船社には民有化の問題はないが、統合に向けての同じような傾向は明白である。一部のオペレーターが市場から撤退したり、買収が行われたり、また大型船が建造されたりしている。スカンジナビアではMols LineがCat-Linkを買収し、ScandlinesがMolsの全株式の40%を取得したが、統合へ向けての勢いは一部では防衛的な動きであり、これは大ベルト海峡の存在、そしてエーレスンド橋の建設を反映したものである。

 

 

 

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