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3 米国造船産業におけるチームアップ及び事業提携

 

前章で詳述した買収・合併による集約統合のほかに、米国造船事業者による他社とのチームアップ及び事業提携がいくつか行われている。本章では最近におけるチームアップ及び事業提携の代表的な事例を記することとする。

 

3-1 海軍艦艇市場におけるチームアップ及び事業提携

 

2-2(1)で記したように、1990年代に入って冷戦構造が終結したために海軍艦隊の必要規模が減少し、米国造船業に対する海軍艦艇の建造発注数が大幅に落ち込んでいる。このような状況に対処するために、海軍艦艇市場を事業のコアとする米国国防関連企業は、減少した国防契約を他社とシェアすることにより一定の仕事量を確保しようと、様々な形でのチームアップ又は事業提携を進めている。本項では最近における2件の事例を説明することとするが、1件は米国造船企業同士のチームアップであり、もう1件は米国造船企業と米国エンジニアリング会社との間の事業提携の事例である。

 

(1) 原子力潜水艦建造におけるニューポート・ニューズ造船及びエレクトリック・ボートのチームアップ契約

米国の原子力潜水艦建造については、ニューポート・ニューズ造船(バージニア州ニューポート・ニューズ)及びジェネラル・ダイナミクスのエレクトリック・ボート(コネチカット州グロトン)は長年建造契約を争うライバル同士であった。しかしながら、2つの造船所における競争関係が成り立ったのも年間2隻以上の建造発注があった冷戦時代までであり、建造発注量が大幅に落ち込んだ1990年代以降においては、1]受注競争に敗れたいずれかの造船所が潜水艦建造事業から撤退するか、2]両造船所の間で少ない建造契約を分け合うか、いずれかの道を選択せざるを得ない状況になった。発注者である米国海軍は、原子力潜水艦建造が可能な米国産業基盤を維持するために、両造船所がチームアップ契約を結んで分業協力により潜水艦を建造することを奨励した。

 

 

 

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