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(5) 余剰労働力の吸収

米国造船産業の製造部門の雇用者数は1990年には91,000人であったが、現在は約60,000人になっている。米国造船雇用の縮小の最も大きな原因は艦艇建造工事量の減少であるが、造船産業の集約化もこれに大きく影響している。最近における米国造船産業のM&Aは、スケールメリットを狙った業界の統合再編が目的であるので、中長期的には雇用規模の整理縮小が当然行われるものと考えられる。

しかしながら、少なくとも最近10年について見れば、米国経済が活況を示していたために、造船産業における余剰労働力は比較的容易に他の産業に吸収されていった。また、1990年代半ばにはオフショア市場が好調であったため、メキシコ湾岸で大幅な新規雇用が創出された。これらの要因のため、造船産業における雇用削減問題はさほど深刻化しなかった。

日本の造船産業における集約化を進めるうえで最大のポイントは、雇用規模の縮小に伴う余剰労働力をどのように吸収していくかという問題であろう。

 

 

 

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