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図5.D:法人所有構造

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5.3.2 借入人の事業活動

海運業は、通常、その性質から「輸送産業(industrial)」又は「商品取引(commodity)」として表現される。

貸出人である商業銀行は、企業の価値を高め、市場の勢いに完全には振り回されない様な借り手を探すようになってきている。「輸送産業」型海運業では、サービス面とか専門化といったものが必要となることが多いが、一方で「商品取引」型海運業は、参入障壁も低く、投資した資本に対して出来るだけ多くの収益を取得するために、投機的な船舶の売買が重要になっていることが多い。こうした事業活動に関連した貸出人にとっての付加的リスクとしては、石油(その他)による公害リスクがある。これは、ウェットバルク分野で、最も明らかなリスクであるが、その他の分野でもこうしたリスクは存在する。優先弁済債務の貸出銀行は輸送産業型海運業でも商品取引型海運業でも、荷主と長期の用船契約により市場の変動に対してヘッジされているものを好む。これがない場合には、財政面での強固さが最も重要となる。

 

5.3.3 経営陣

優先弁済債務の貸出人にとって、経営陣の質、経験、資格及び動機が主に重要な点となる。小規模な一族企業で、一族のメンバーが昔から所有し、経営している海運業の場合には、経験や動機の面で疑問の余地はほとんどない。しかしながら、貸出人にとって基本的に重要な点は、経営陣が効率よく経営に携わり、元利償還に必要なキャッシュ・フローを生み出すように事業を指揮する能力があるかということである。このためには、経営や営業分野での管理能力ばかりでなく、財政面での管理能力も持ち合わせた総合的な経営技術を必要とする。海運業の日々の経営の複雑さを考えれば、優先弁済債務貸出人が経営面でのコントロールを行うことは現実的には不可能である。

 

 

 

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