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図2.1-2 原油種ごとの800mmHgにおける蒸発速度係数の違い8

 

荷室には原油ガス排出弁とイナートガス吸引弁が設置されており、荷室内の圧力上昇により排出弁が開き、気温の低下などの要因で圧力が低下した場合には新たなイナートガスが荷室内に導入される。ただし、最近のタンカーにおいては、排出弁は1,300mmHg程度で開く設定になっており、通常の気象条件下では大きな吸排気が起ることは稀と予測される。積荷航海時の原油ガスの排出量は、API(1981)の報告9によれば1週間あたりにガス体積として積荷量の5%程度と推定されており、本報告書でもその数字を使用するものとする。なおAPIの報告書は、IPCCガイドラインにおいて原油移動時のCH4排出量推定方法の原典となっている。

なお、原油ガス中には化学構造(C数等)の異なる数種のガスが存在するが、その比率は原油の種類に左右される。測定例を表2.1-2に示したが、プロパン(表中C3)とブタン(表中C4)の占める割合が大きい。また、CH4(表中C1)に注目すると、原油ガス中の濃度は2.0〜12vol%の範囲にある。

本報告書では4つのフェーズ(積荷航海時、バラスト航海時、積み荷時、揚げ荷時)ごとのCH 4 排出量を計算しているが、その場合はまず産地ごとに蒸発速度係数に従ってトータルの原油ガス量を算出し、さらに全原油ガス中のCH4濃度を、表2.1-2に示した比率を用いて計算した。

 

8 鬼塚、渡辺、西田、日立造船技研報、1980

9 API(AMERICAN PETROLEUM INSTITUTE, 1981.): Atmospheric Hydrocarbon Emission From Marine Vessel Transfer Operations, Publication 2514A

 

 

 

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