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表2.1-1 機関排ガスからのCH4の排出量試算の比較

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*高速4サイクル機関2台と中速4サイクル機関及び低速2サイクル機関のおのおの1台の実測

 

2.1.2 原油の輸送プロセスに伴うCH4の排出量

燃焼以外の船舶運航に伴うCH4の発生源としては、原油の輸送プロセスに伴う大気への放出が考えられる。原油輸送プロセスに伴うCH4の排出は、積荷航海時、バラスト航海時(空き荷航海時)、積み荷時、揚げ荷時の4つのフェーズに分解できる。2章の冒頭にも述べたように、荷役時に発生するCH4の排出量については、原油輸送プロセスに伴うCH4の排出とするのか、議論の分かれるところである。特に荷積み時については、荷役の動力源も陸上側に頼っており、陸上側(=原油供給施設側)の排出として把握すると言う考え方もある。しかし、陸上の温室効果ガス排出量算定のために作成されたIPCCガイドラインにおいては、原油供給時のCH4排出量についての記載が小さく、このため国内の原油供給施設における原油荷積み時のCH4排出についても、日本国からのUNFCCC提出の報告書にカウントされていないのが現状である。

これらを鑑みて、従来カウントされていない排出分の実態を把握するために、原油輸送プロセスより発生するCH4排出について、検討を試みた。

 

(1) 積荷航海時のCH4排出の状況

積荷航海時には、タンクの上部空間(一般にフル充填で荷室体積の5%程度)はイナートガスと呼ばれる低酸素ガスが加圧充填されており、その圧力は大気圧+約300mmHg以上とされている。イナートガスは、A重油などの比較的良質な燃料を専用ボイラーで燃焼し、その排ガスをスクラバーなどにより洗浄冷却したもので、生成直後のイナートガスにはCH4や炭化水素類はほとんど存在しない。

しかし、積み荷作業時あるいは航行中に原油液面より原油ガスが蒸散し、イナートガス中に原油ガスが徐々に拡散混合する。この際の蒸発速度係数A(m3/m2・h1/2)は、気温、原油の種類などにより影響されるが、おおよそ図2.1-2に示すとおりで、各温度軸に対しては、2〜2.5倍程度の差異しかなく、飽和蒸気に達するまでの到達時間に差があるものの、半日程度経過すれば最終到達濃度(=飽和蒸気圧濃度)になると予想される。また、このときの同一圧力下におけるCH4等の原油ガス濃度(飽和濃度)は、原油中のCH4等のガスの組成比に応じた濃度になるものと考えられる。

 

 

 

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