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安全委員会は、毒物試料の採取は4時間以内に行うべきと考え、これを推奨してきた。本件にあって、毒物検査試料採取までに16時間と36時間が過ぎたことは、試料が時機遅れになっていることと、この海域での事故調査の優先権が不十分であることが明らかにしたのである。

注43 海難事件報告書--合衆国籍油送船エクソン・バルデッツ乗揚事件。1989年3月24日アラスカ州バルデッツ付近プリンス・ウィリアム海峡ブライ礁で発生。(NTSB/MAR-90/04)

注44 海難事件報告書--合衆国籍漁船シー・キング転覆及び沈没事件。1991年1月11日オレゴン州アストリア付近で発生。(NTSB/MAR-92-05)

 

安全委員会は、合衆国運輸省とコースト・ガードとに対し、事件後の毒物検査試料採取は時機を失せずに実施することが肝心であると、何回かの勧告を行ってきた。

安全委員会が既に済ましていた輸送機関の事故調査資料を特別に再調査した結果として1989年12月5日に合衆国運輸省(DOT)に対し、次の内容の勧告を行った。

総ての[輸送]機関が定めるべき規則は

I-89-6

総ての輸送機関で個々の従業員に対する事件発生後及び内部要因確認後の酒類及び薬物検査についての統一した規則を設定すること。血液内アルコール濃度が許容範囲である0.04%より低い場合との条項を除き、連邦鉄道省(FRA)の現行の規則を、参考規則として総ての運輸機関で採用すること。他の輸送機関が参考資料としてFRA規則を使用し、採血と採尿、更に血液が陽性であることを決定することとだけ記すこと。最小限、FRAの検査で内容を確認された薬物は、他の機関においても活用されるべきである。FRA形式に言及することが、規則の運営とか制定のことに言及することではない。安全委員会は、規則の制定が種々の運輸機関で異なるべきであると考えている。総ての機関に向けた規則は、内部要因や事件の性質によって採血、採尿が4時間以内に実施することと規定するべきである。採取が4時間以内に行われなくとも、血液と尿の検査試料を出来るだけ早く採取し、遅れた理由について、管理者に文書で報告するべきである。

1990年8月3日DOTは、これに対して回答し、

私は、送付された国家安全委員会(NTSB)からの、特に、事件後の薬物検査に主題を置いた運輸省の薬物検査規則に関連した9通の勧告書(I-89-004から012)に対し、次のように回答いたします。

 

 

 

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