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船長とナビゲーターが計画した進路線にも、水先人のヴィンヤード海峡通航予定にも、この注意に対する関心があったことが示されている。安全委員会は、NOAA海図にも合衆国沿岸水路誌にも、水路の安全度を高めるために効果的で、航海者にとって必要な深度測定の情報が欠落しているが、当該水域の使用海図には、QE2の船長及び水先人が航海計画を考慮し、あの深度39フィート地点と岩礁地帯を避ける上で、十分な情報が示されていたと確信している。

英版海図(BA)や一部の合衆国国防海図製作部の海図では、その情報が利用できる場合には、小さな囲みの中に測深の日付が書き込まれている。1992年11月22日NOAAは、50万分の1及びそれより大縮尺の全海図に“資料表”を加えることを求め、海図手引き(注41)を改版した。この資料表には、BA版海図で見られるのと同様な測量の日付についての情報が含まれ、その海図の来歴を示す、測量の詳細が含まれることになるであろう。NOAAが新版海図を発行する間隔は、6箇月から12年間といろいろであるところから、この測量の詳細を記入する作業が完成するには、数年掛かるであろう。

合衆国沿岸水路誌各巻では、その内容に応じた海図番号、あるいは特定の海域や港域で使用される海図番号を表示している。しかしながら、沿岸水路誌には、測量を完了した日付、測量手段、あるいは測量索の間隔などの情報を示していない。質的価値が加わった、この情報は、航海者が特殊な航路に関する資料の精度を、自ら判断して使用することができるから、航海計画を立てる際に役に立つのである。1930年以前に測鉛索を用いて得られた測量資料は、特定の地点に限れば、最新の資料と同等の精度であろうが、測量索の距離間隔や測量時間間隔の理由から、岩礁その他の障害物を見落とす可能性が高いので、全体としては、不完全であると考えて良い。全方位式音響測深儀のような、極く最新の海底測量方式は、1980年代中頃までは使われていなかったのである。

海図と違って、合衆国沿岸水路誌は、航行情報についての記載量に制限はない。そこで、適切な沿岸水路誌には、海図に記載できない必要な航行上の情報を落すことなく、全体を網羅した完全な付加情報として航海者に示されるのである。安全委員会は、航海用海図に資料表が使用されることを援助する立場をとる。

注41 海図使用手引き、1992年合衆国商務省、大洋・気象局刊行。第7版。

 

QE2のナビゲーターは、合衆国沿岸水路誌と同じ情報を記載している英版水路誌では、深喫水船がヴィンヤード海峡を入(出)航する場合には、“NA”灯浮標の南東方を通航することを奨めていると証言している。しかしながら、ヴィンヤード海峡及びバッザード湾付近海域について記載した、合衆国沿岸水路誌の分冊では、深喫水船がヴィンヤード海峡の入航、出航に対し、同様な推奨をしていない。

 

 

 

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