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この水路誌では、ナンタケット湾ウッズ・ホール、オーク・ブラッフズ、ヴィンヤード・ヘイブン、そして、他の入航路を使って東方から同海峡に近づく際についての特別な情報を、間違いなく、記載している。安全委員会は、ヴィンヤード海峡に西方から入航する深喫水船に対する情報が、合衆国沿岸水路誌第2巻第5章に東方からの入航船に対するのと同様に記載されるべきであると確信する。

 

毒物検査

毒物検査用試料の採取の遅れは、重要なことであった。ケイプ・コッドの安全局支部(MSD)から派遣された、コースト・ガードの訪船検査係員は、水先人が同係員にNABHの職員が、水先人の検査用試料を採取に本船に来ることになっていると説明したので、乗揚事件後ほぼ13時間が過ぎるまで、船橋当直者の毒物検査用試料の採取を始めなかった。この時、訪船検査係員は、QE2の船長と船橋当直者について、検査用試料の採取をするのかと、プロビデンスのMSOに問い質している。

試料の採取は、酒類や薬物が事件に関わったかを決定する証拠の効能が消滅していまうおそれがあるため、事件発生後、出来る限り直ちに始めるべきであった。この方法は、乗組員が薬物をみだらに使用したくなる気持ちを束縛するのに役立つし、試料採取を引き延ばして対象薬物の検出が出来ないようにしてまおうとする考えを打ち砕くことにも役立つのである。それでもなお、事件について詮索することは、特に海洋環境においては、時機を得た海洋からの試料採取の機会を遅らせることになるし、また、早期の試料採取が望まれるような状況下では、実行可能なら直ぐに採取を始めるべきであり、採取の遅れについては、その理由を書き残しておくべきである。しかしながら、事件のあとで、乗組員が酒類や薬物の検査を拒んだ外国籍船に対しては、罰則が与えられないということも承知しておくべきである。

船長、水先人及び一等航海士からは、採尿だけであったためと、その採取が遅れたためとで、本件に関係している乗組員が飲酒した状態であるかどうかを見つけ出す可能性は、なくなってしまった。時機を得た試料用の採血は、血液中のアルコール濃度を計測するのに用いられ、また、肺の深部からの呼気は、血液中のアルコール濃度(注42)を計測することを可能にするため、時機を得た呼気試料は、採血に替わって使用されるのである。

安全委員会は、毒物検査の結果、薬物が全く本件の原因となっていないと結論することができたのである。しかしながら、飲酒を調べるための船長、一等航海士そして水先人の尿検査も呼気判定もしなかったために、安全委員会は、飲酒が原因となったかどうかについて結論を出すことができなかった。

 

 

 

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