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連邦規則(33CRF164.11(k))は、自船の乗組員以外の者である水先人を乗船させたときには、水先人に喫水、操船性能、安全運航に関わる操船上の特性を知らせることを定めている。しかしながら、この規則には、水先区域内での航海計画について検討することを明文化していない。

そして、この件についての調査結果として、安全委員会は、1991年10月21日に合衆国コースト・ガードに対し次の勧告書を提示した:

M-91-28

船長及び水先人が、航行中に遭遇すると予想される危急事態と、それに対する操船上の注意点とにつき、同意に達するまで討議することを定めるよう、33CFR164.11(k)を改正すること。

コースト・ガードは、1992年5月31日これに対し、“これ以上の規則は不必要である。”と答えている。コースト・ガードは、安全航海相談所によって熟慮されるべく、この勧告書を議事録に留めておいた。安全委員会は、1992年8月31日付けでこの勧告書を、“公開--満足できる反応”に等級を位置付けた。しかし、この提示に関し、同様な勧告書の過去の例により、安全委員会は、安全勧告書M-91-28について、“公開--受け入れることの不可能な反応”に等級を分類し、この内容を繰り返し勧告した。(船長/水先人の意志疎通を論じた、合衆国コースト・ガードに対する安全委員会の勧告書に関する追加説明については、付録Dを参照。)

安全委員会は、1990年6月10日マサチューセッツ州バッザード湾において別の乗揚事件を起こした、パナマ国籍旅客船バーミューダ・スター(注38)を調査した。この事件では負傷者は出ていないが、船底部分には修繕費ほぼ400万ドルにもなる重大な損傷を生じていたのである。

バーミューダ・スターは、船長/水先人の意志疎通の拙さを示した、もう一つの例である。本例では、航海計画について、同意に達するまでの討議が不足していたこと、その航海計画に従った航路監視が十分でなかったことが、乗揚を招いたのである。バーミューダ・スターとQE2の報告書は、共に、同時期に作成されたため、安全委員会は、バーミューダ・スターの調査を終えても、BRMについての勧告書を添付しなかった。安全委員会は、バーミューダ・スターの船橋当直者と州公認水先人とが視界制限状態の中を暗岩の存在する水域に接近して航行しているのに、船位を確認することも、短時間内に航行模様を監視することもしなかったことによって乗揚を発生させたと結論した。

 

 

 

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