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CRM成功の礎は、情報交換の障害が何かを認識し、その存在を意識させることである。即ち、乗務員の操縦室内の行動についての修練が行き渡っているか、乗務員が個々の責任についてどんな態度をとるか、そして組織が問題解決に近づいたときに反対を唱え易い性格を持つものがいるかなどである。

この概念の重要性から、多くの合衆国の民間航空会社や空軍が、CRM訓練を採用するようになったし、この訓練で人命と機体を救出されたことで(注28)信頼が得られるようになっている。

操縦室内での乗務員の共同作業や情報交換の問題点は、船橋内出も存在するのである。安全委員会は、船橋当直の構成者の情報交換や共同作業遂行の努力の失敗、あるいは、航海中の潜在的問題点の認識不足、差迫った問題点を共同で解決する努力(注29)の不足が原因となった、多数の海難事件を調査してきた。

注28 航空事故報告書-アロハ航空株式会社刊。同社243便、ボーイング737-200N73711機。

1988年4月28日ハワイ州マウイ島付近で発生(NTSB/AAR-89/03);ユナィテッド航空株式会社232便、マクドネル・ダグラスDC-10-10機。1989年7月19日アイオワ州シォークス市シォークス・ゲイトウエイ空港で発生、(NTSB/AAR-90/06)。

注29 海難時報告書--合衆国籍油送船スター・コネティカット乗揚事件。1990年11月6日太平洋、ハワイ州バーバース岬付近で発生(NTSB/MAR-92/01);ギリシャ共和国籍油送船シノゥサ、合衆国籍曳き船シャンディ曳き船列衝突事件。

1990年7月28日テキサス州ガルベストン湾レッド・フィシュ島で発生(NTSB/MAR-91/03);パナマ共和国籍旅客船バーミューダ・スター乗揚事件。1990年6月10日マサチューセッツ州バッザード湾で発生(NTSB刊、海難報告摘要書DCA90MM043、1993年2月12日採択);合衆国軍艦ドワイトD・アイゼンハーワー(CVN69)のスペイン籍撒積船アードリッツヘの激突事件。1988年8月29日バージニア州ハンプトン・ロードで発生。(NTSB/MAR-90/01)

 

合衆国コースト・ガード、運輸省安全委員会あるいは他団体による、多くの海難事件の調査は、大多数の激突事件、乗揚事件または衝突事件の原因が船橋当直者達の、次に示す欠陥に集約されることを明らかにしている。

即ち、

●適切な計画、実行そして自船の航行状況の監視

●明確な船橋当直者間の意志疎通方策の設定(注30)

●船橋当直者周囲の利用可能な資源の有効活用(例えば情報、各自の性格または機器類。)

 

 

 

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