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QE2は、ハリファックスを8月6日18時20分に出航し、ケープ・コッドの東方、ナンタケット礁(注13)の東方と南方、そのあとヴィンヤード島の南方を過ぎてきた。8月7日11時45分QE2は、ヴィンヤード島西端のゲイ・ヘッド西方5海里ばかりのところで水先ボートに出会い、11時50分ヴィンヤード海峡通過のための水先人を乗船させた。最初の予定では、カッティハンク島西方約4海里にある、バッザード・ベイ入口灯柱(バッザード・ベイ灯)の西方海域で水先ボートに出会うようになっていた。しかし、当日が好天気であったことから、船長は、ヴンヤード海峡入航中にソー・アンド・ピッグス南方の浅礁海域を避けるため、同海峡入口南方で乗船するよう要求し、水先人がこれを受け入れていたのである。

水先人がQE2の船橋に来たとき、船長は、前の年に本船がロード・アイランド州ニュー・ポートに入港したときと同じ水先人であることに気が付いた。水先人も、今回、本船の水先を行うに当たり、当海域の海図を研究して記憶を甦らせていたと述べたのであった。水先人は、一年前に乗船した経験もあるので、本船の操縦性能の特性にも分かっていたと話している。水先人が、ゲイ・ヘッド沖合でQE2に乗船したとき、“私の[水先帳]に記録する船体の全要目が、適切に記された用紙一枚を受け取った。”と述べている。水先人は、いつもの通りに、長さ、幅とともに本船の喫水、運航状態と機関やバウ・スラスターあるいはレーダーが間違いなく作動しているかどうか知りたかったと証言した。船長は、“夕刻に海峡を出航する際、下船するのは、”どの辺りにするかと水先人に尋ねたが、これは、水先人が乗船したときか、入航錨地に向かう航行中のことか覚えていない。船長は、水先人が“バッザード・ベイ入口灯柱(バッザード・ベイ灯)とブレントン礁灯柱(ブレントン礁灯)”との間の一点を海図上で船長に示したと述べている。

船長と水先人とは、錨地に向けてヴィンヤード海峡通過中の速力を航海全速力とすることで合意した。ヴィンヤード海峡を進むに従って、速力を18ノットまで上げ、海峡をかなり進んだところで15ノットに減速した。その後、オーク・ブラッフズの錨地に近づくまでは、種々に速力を変えて進行した。水先人によれば、本船のヴィンヤード海峡での進航路は通常のものであった。水先人は、錨地を旅客の観光上陸に船に都合の良い、オーク・ブラッフズに近寄った地点に変更することを提案していたけれども、13時30分本船は、船長が前もって決めていた錨地の近くに投錨した。(図3参照。)オーク・ブラッフズ沖合錨泊中に、旅客は、本船ボートで陸地に向かったのである。水先人は、夕刻に出帆してヴィンヤード海峡を出航するときにも、本船の水先をすることになっていたため、この間船内に残っていた。

(注13) ナンタケット礁は、ナンタケット島の南東方に存在し、幾つかに分かれて存在する浅礁全体を一つのものとして呼ぶときの名称であり、船舶にとって、合衆国内にあって最も危険な暗礁の拡がる海域の一つとなっている。

 

 

 

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