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それから間もなくして少なくとも、5隻のコースト・ガードの巡視艇とマサチューセッツ州ケープ・コッドのコースト・ガード海上保安分遺隊(MSD)(ロード・アイランド州プロヴィデンスの海上保安署の下部機関)の隊員が、QE2に派遣された。MSD隊員は、船体損傷の確認、油濁汚染の可能性の確認のために派遣されたものであり、発生原因調査に着手した。8月8日02時01分MSD隊員が、QE2に到着した。乗船に先立ち、MSD乗船係員は、喫水は船首32フィート4インチ船尾31フィート5インチ船体傾斜はないと記録した。05時49分コースト・ガードの沿岸警備艇が、船体の破損部分から流れ出るおそれのある油分を集める目的で、1,000フィートに及ぶ油濁汚染防止装置をQE2の船尾回りに展張した。乗船したMSD隊員は、乗揚時に破口が生じた別の空タンクから、約50ガロンの廃油が流失したと推定した。乗揚の通報を受けた直後からボストン港に到着するまで、数隻のコースト・ガードの巡視艇が、QE2の周囲で讐戒体制を敷いた。この体制は、主に船舶の交通管制や、少しでも油が流失したらこれを吸引するため、旅客移送の監視、あるいはQE2の状況が悪化した場合に備えるためのものである。

 

旅客の陸上移送…QE2の損傷により、キューナード社は、全旅客をロード・アイランド州ニューポートに移送することを決定した。ニューポートから、バスでプロヴィデンスに移し、そのあと列車で、本来なら航海の終着予定地であるニュー・ヨーク市に行ってもらうこととした。キューナード社から要請のあった海面下船体部の調査が完了したのち、8月8日15時30分ごろ555人の旅客が小型旅客船一隻でニューポートに移送された。この船での移送は一回だけである。17時25分他に利用できる民間の船舶を手当できなかったので、船長は、残りの旅客1,269人の上陸を容易にするため、QE2をニューポートに近付けるよう、コースト・ガード当局に対して錨地変更の許可を申請した。この申請は、認められ、QE2は、ニューポートから4海里ばかりの錨地に移動した。ブレトン礁灯柱(ブレトン礁灯)の北方約0.7海里の地点に投錨したのち、20時06分にQE2は、旅客の陸上移送のため、自船の交通艇5隻と地元で雇船した2隻の小型旅客船を用意した。全旅客が、8月9日02時20分までに上陸を終えた。03時55分QE2は、コースト・ガードの沿岸警備艇一隻と民間の曳き船二隻に護衛され、マサチューセッツ州ボストンの造船所に向け出発し、無事、8月10日11時55分ボストンに到着した。当地では、検査と仮修理のため乾ドックに入ったのである。

 

事件発生に先立つ諸事実

オーク・ブラッフズは、8月3日にニュー・ヨークで始まった、今次航海における最終寄港地である。この間、メイン州バー・ハーバー、ニュー・ブラウンズウィック州セント・ジョンそしてノバ・スコシア州ハリファックスに立ち寄っている。

 

 

 

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