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屋根は切妻造でもニワの部分が落棟になっていたり、増改築によりどちらか片方が入母屋造になっている例もみられる。また苅谷勇雅の論文によると屋根形態において切屋根といわれる平屋であるが屋根を二枚重ね、上の屋根の軒まわりはすべて白漆喰で塗りまわしたものが特徴としてあげられ、日野商人の中でも番頭級以上の者の家のみがこの手法を使ったというvii

増改築については、台所の改築がやはり多い。台所の設備の改善により床を張り、いわゆるダイニングキッチンにした例もある。また主屋の裏に増築したり、新築した例も見られた。またつし2階建、平屋建てであったのを改築により本2階建にした例も見られた。

また近年新築される住宅については、ほとんどが本2階建であるが、プレハブ住宅も見られるもののそういった住居でも、通り側にオクノマやデノマにあたる部屋を設けるなど伝統的な形態を踏襲している。また主屋の前面は、板塀は設けずに前栽のみまたは駐車場とする例も多いが中には伝統的な板塀に桟敷窓を設ける例もみられた。

日野のまちなみで特徴的であるのが、京都や大津のように通りに面して直接、主屋が建つものと、主屋と通りの間に境界要素として板塀や土塀を設け、その内側には前栽を設けているものがあることである。現在の境界要素の主なものは板塀であるが、宝暦の大火以前には生垣が、一般的であったことが、苅谷勇雅の論文『都市景観の形成と保全に関する研究』のなかで指摘されている。また境界要素についても、オクノマのみを囲う場合と、オクノマ・デノマの前面を囲う場合と主屋全面に板塀を建て、入口の前面には門を設ける場合と3種類の形態があることが今回の調査で明らかになった。主な境界要素である板塀は、宝暦の大火以前は生垣が多く、また板塀であっても閉鎖性の低いものであったが宝暦の大火後、高塀が普及し、また主屋全体を塀で囲うようになった。現在では板塀はオクノマの前面に設けられるものが多い。さらにその板塀には、桟敷窓が設けられ、祭礼時には開放されるが、苅谷勇雅の昭和47年の桟敷窓の分布調査と比較すると、桟敷窓は減少する傾向にあることが明らかになった。しかし桟敷窓が新規に設けられた例もあり、伝統的なまちなみが継承されていることも明らかになった。

 

vii 苅谷勇雅『都市景観の形成と保全に関する研究』 1993年

 

 

 

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