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現在ではオクノマは8畳であるところが多いが当家は6畳である。しかし部屋の配置、呼び方に関しては日野で一般的であるといえる。門口から入って左手に居室部があるが、反対の右手にトングラと呼ばれる収納スペースがある。それはデノマとダイドコロの向かいにそれぞれ設けられており、現在改築してダイドコロの方はなくなっているが、以前はデノマの方には提灯など祭礼用品を収納し、ダイドコロの方は米や、皿などの食器を収納していた。20年ほど前に改築をして三つ口のクドと井戸があったダイドコロのニワの部分に床を張り居室とし、その奥に台所を増築し、井戸もそこに移した。またニワ部分に天井をはったので現在は小屋裏は見えない。それまではつしには柴などを入れており、鹿の角で柴を取り出していた。部屋の境は差鴨居が用いられている。

屋敷の配置は、主屋の奥に便所、中庭がありさらにその奥にプレハブの離れがある。そのまわりにも庭が広がり敷地の裏手には舗装されていない道路をはさみ、畑がある。土蔵はなく、全体的に敷地も規模が小さい。

表構えは塀も前栽もなく格子が前面にはめられている。つし2階部分の屋根の軒裏は塗り込められていない。このように当家は日野の一般的な民家とはすこし異なるタイプであるといえる。

 

第三節 日野の町家の特徴

 

これまでにあげられた事例をもとに日野の町家の特徴について考察する。また今回の調査では3軒のみの調査であるが、本町通に面する町家でも、村井、大窪、松尾の町家と西大路とでは少し異なる可能性があるといえる。

敷地は一般に間口に対して奥行が長い矩形であるが、京都や大津に比べ間口は広いと思われる。屋敷取りについては、道路に面して板塀や前栽を設け、主屋が間口いっぱいに建ちその奥に浴室や便所が設けられ、中庭をはさんで2、3室の離れが、そしてその奥には土蔵が建つ。このように敷地取りは他の都市と同様、町家に特徴的な形式であるといえる。

主屋は基本的に切妻造平入桟瓦葺である。階高は平屋建が大多数であり、2階を居室として使用する例はほとんど見られない。平面形式は整形または喰違四間取で、この周辺地域の農家の平面に類似するv。土間部分はニワと呼び、ニワにそって通り側からデノマ、ダイドコロ、デノマの奥に座敷であるオクノマ、その背面にヘヤがあるのが典型的な間取りである。一般的にオクノマとヘヤは8畳、デノマは4畳であり、ダイドコロは6畳である場合が多く、デノマとダイドコロの配置の仕方によって喰違型の場合はニワが直線となり、整形に居室が配される場合は、ニワ側にダイドコロの2畳分が張り出すことになる。当地域周辺では四間取の床上部分を「よつずまい」と呼び、草津市志那の民家(農家)でもみられる呼び方であるvi。またニワの居室部分と反対側にヘヤが設けられることも多い。

 

v 『中主町のすまい ―近松家と周辺の民家―』 中主町教育委員会ほか

vi 吉見静子「近江の民家」『湖国と文化』

 

 

 

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