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フェローシップに参加して

波戸岳(昭和大学医学部5年)

 

まず、フェローシップの参加メンバーと出会え、すごく充実した経験ができたことに大変感謝しています。色々考える事や感じる事も多かったが、以下、いくつかに話を絞ってみました。

第1に「何を学んだのか」。1つあげるとするならば、双方から物事をみることの重要性だろう。今回フェローで、WHO、JICA、NGOの方々から地域で働く助産婦さんまで幅広く話を伺うことができた。政策決定する側の立場と現場の立場、双方から学ぱせてもらい、大局的に考える重要性を改めて感じた。幅広く物事をみて、自分だったらどうするか、と意識する姿勢が少しは身についたかと思っている。

次に「何が一番問題と感じたか」。私にとっては貧富の差のインパクトが強かった。新宿の高層ビルに勝るような一角があるのに、子どもが危険なゴミの山を裸足で歩き、その日暮らすお金の為にリサイクルできる物を探し、学校にもいけない状況がある。この大きな貧富の差をどうすれば少なくできるのか、自分に何ができるのか、と考える一方で、援助によってみんなが平均的な豊かさを得るのは望ましいことなのかとか、ゴミで暮らす事がいけないのか、とひっかかった点もあった。私の目には彼らはその世界で精一杯生きているように見えたし、決して不幸なようには見えなかったのだ。それは、私は彼らからプライドを強く感じたからだと思う。子供でも、存在意義(例えばリサイクルで収入を得て家計を支えている意識など)をもって生きているのを感じた。

私は、そのあまりにも不衛生な環境は改善してあげたいと思う。他にも協力すべきところはあるけれども、抑えるべき点もあるだろう。あくまで国際協力は自立が最終目標だ。彼らはゴミによって豊かでないにしても自立しうるのだ。私達が手をだす際、彼らの今までの生活を極力尊重することが彼らのプライドを守ることにつながり、国際協力して相手をむしろ不幸に感じさせてしまうのを防ぐだろう。私は自立することと、豊かになることとを混同していた。

国際協力する際、相手国の生活、文化などを尊重することは、援助という一方通行の関係にならず、お互いに与え、与えられる関係を築くことができ、相互理解が深まるだろう。そして、人的交流がより盛んになり、お互いが満足のいく国家間関係につながれば理想的である。私自身、そんな国際協力に身をおけたら幸せだろう。

今の時代、生きることとは、幸せとは、といった哲学的思考をしでいるだけでは済まされなくなってきた。現実に臓器移植や遺伝子治療など、私達は判断を迫られる日がきているのだ。しかしながら、今回のフェローで、ゆっくりと幸せとは何か、なんて考える時間がほしいと久々に感じたのだった。

 

 

 

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