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第7回国際保健協力フィールドワーク・フェローシップに参加して

梶村いちげ(名古屋市立大学医学部6年)

 

わたしが、ぼんやりと国際保健協力に興味を持ちだしたのは、中学生か高校生の頃だった。偶然、フィリピンのスモーキーマウンテンで働く子供達や、インドネシア軍の侵攻のもとで苦しめられていた東ティモールの人々の姿をテレビ番組で知る機会があった。悠長にテレビでその光景を見ている自分と、彼らの置かれている状況の違いに愕然とした。この状況を何とかしたい、そのためには医師となり、彼らの健康問題を解決することが全ての問題を解決する上で重要だと考え、医学部進学を志した。今にして思えば、単純かつ傲慢であり、無知である。

その延長線上に今のわたしはいる。医学部へ進学したものの、自分のおかれた環境と常に慌ただしさを言い訳にして、何もしてこなかった。語学力を磨くこともせず、自ら知識を得ようともしなかった。それがいかに、何のせいでもなく自分自身のせいであるということを痛感させてくれたのも国際保健協力フィールドワーク・フェローシップであったと思う。

今回、国際保健協力フィールドワーク・フェローシップに参加させていただき、国際保健協力の現場を見ることができた。政府機関としての、国際的な機関であるWHOから、日本の政府機関であるJICA、そしてJICAのプロジェクトの現場までを見せていただき、公衆衛生・保健行政の重要性と、それが軌道に乗ったときの成果の大きさを数宇として、またそこで働く人々から肌で実感することができた。非政府組織としては、パヤタスのスモーキーマウンテンを訪ねたときに、そこで活動している方にお話を伺うことができた。その方のスモーキーマウンテンに暮らす子供と話している姿や笑顔は、国際協力の重要な一面であると感じた。スモーキーマウンテンに暮らす子供達は、みんな明るく、笑顔である。しかし、その笑顔は“子供らしさゆえ”であり、現実に気づいたとき絶望する子供もいる、というお話を聞き、はっとさせられた。

参加者の間でたびたび話題にのぼったことであるが、国際保健協力、というとき、二つの方法がある。一つは集団を相手にする公衆衛生的立場であり、もう一つは、個を相手にする臨床的立場である。どちらの立場もそれぞれ大切であり、それぞれの必要性をお互いに充分分かっていることが重要であると感じた。また、何を追求して国際保健に関わるのか、というのも大きな問題である。“幸せ”だろうか。では“幸せ”とは何だろうか。それを考え始めると何もできないので、具体的な問題解決から始める、とおっしゃった先生がいらした。非常に共感できた。そしてまた、自分が興味を持てることをやる、そこから満足を得るということも重要であるというお話にも、励まされた。

さて、では、わたしはどのような形で国際保健に関わっていけるのであろうか、と考えるとき、たくさんの迷いが生じる。しかし、参加する以前に比べはっきりしてきた。今は、まず、自分自身を磨きたい。

最後に、このような機会を与えて下さった方々と参加者の皆様に深く御礼申し上げます。

 

 

 

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