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子供達の笑顔から考えさせられた事

石井雅子(国際医療福祉大学3年)

 

フェローシップには、海外の医療やそのシステムを学べるという貴重な機会を通じて、今後へ向けて何らかのヒントがつかめるのではないか、という軽い気持ちから参加しました。しかし、研修内容もさることながら、他の参加者の国際保健に関する知識や目的意識の高さに圧倒され、目の前のものを吸収することに精一杯の10日間となりました。

そんな中、唯一心が安まったのは、ManilaのストリートチルドレンとTarlacのSKGKの子供たちと触れ合った時間でした。タガログ語を習ったり、折り紙を教えたりして楽しいひとときを過ごしました。私自身の英語力のなさに加え、タガログ語しか話せない子もおり、意思の疎通は必ずしもうまくいっていたとは思いませんが、お互いに分かり合おうとする気持ちがあれば、コミュニケーションはとれるものだということを実感させられました。そして、何よりも時折見せてくれる屈託のない笑顔には、本当に心が洗われました。しかし、その背後には自ら物を売りに出なければならないほど逼迫した生活、十分な栄養も摂れない現状。我々から見れば、彼らの生活は想像も出来ないほど不便かもしれないけれど、あの笑顔を見る限り、少なくとも子供たちにとって現在の生活は充実しているのではないかと感じました。果たして物質的に恵まれていることが本当に幸せなのだろうか、それとも、家族みんなで協力して生きていくことが幸せなのだろうか、考えさせられました。

よく耳にする話ですが、国際協力を考える上で大切なことは援助をする側の一方的な感覚ではなく、現地の人々の立場に立って物事を考えていかなければならないことも実感させられました。お金やものを送ることも一つの国際協力ではありますが、『百聞は一見にしかず』、一度は現状を見る必要があると思いました。フィリピンヘ行く前に私が想像していたストリートチルドレン達の暮らしぶりとは違い、実際に彼らの家にはテレビがあり、カラオケを楽しんでいる光景には大変驚かされました。かわいそうだからと一方的に手を差し伸べるだけでなく、現地の人々と触れ合うことから本当に必要とされているものは何かを考えることが、国際協力には必要なことであると思いました。そしてまた、現地で共に喜びや悲しみを分かち合うことによってお互いの信頼関係を築きあげていくことも、重要なことであるのではないかと感じました。実際に現地で活動をなさっている方のお話や、他の参加者の国際協力に対する姿勢を学びつつ、今後さらに自分なりに掘り下げて考えていきたいと思います。

私にとって、今回のフェローシップは国際協力を考える第一歩になりました。研修に参加して、国際保健に関する知識を得た事も大きかったですが、それ以上に意見を言うという意味でも、存在という意味でも、自分というものがない事に気づかされたのは大きかったです。そして、何よりも今回参加したフェローの仲間達と出会えた事は最大の収穫でした。この先進む道はそれぞれ違いますが、今後も情報や考えを交換し、切磋琢磨し合えればいいと思っています。今後へ向けて見つかったたくさんの自分への課題を、ゆっくりと時間を掛けて解決していきたいと思っています。

 

 

 

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