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フィールドワーク・フェローシップを終えて

神山淳(慶應義塾大学医学部4年)

 

フィリピンから帰国して日本でのふだんの生活に戻った。いざ報告書を書こうと思ってもなかなかまとまらない。フィリピンで毎夜繰り返されたディスカッションでもいっこうに答えのでなかった問題は今もふと私の頭をかすめる。…「国際協力って何」。「国際協力に意味があるのか。」

私が今回このフェローシップに参加した理由。それは国際協力とはどのようにすすめられているのか、そして、それに携わっている人間はどのような人たちなのか、そして、それを目指す学生は一体どんな考えを持っているのか、それを知りたかったからだ。日本でも問題が山積している。私は自分の目の前で困っている人(困っていると決めつけるのはまずいが)がいるのに、それを差し置いて遠くにいる人に何かしようとは思えない。従って、今回私は他の参加者と比較したら、かなり国際保健協力というものに懐疑的であったはずである。学校の友人にもこの研修に参加する直前、どんなにフィリピンで良いものを見せられても、私は絶対将来国際保健協力に関わらないという自信がある、と言ったほどだ。しかし、日本での研修、フィリピンでの研修はそんな私にとっても非常に興味深いものであり、国際協力に関係する諸団体の活動、その連携など非常によく分かった。

日本に帰ってきて、友人に「国際協力やりたくなった?」と聞かれた。私は「いいや」と答えた。研修以前と気持ちに変化がなかったわけではない。彼には言わなかったが私は国際保健協力をやりたくないのではない。やらないのだ。

一つは、勿論海外で仕事をすることの魅力は少し理解できたが、やはり私は日本の問題を無視できないということ、そしてもう一つは、結局日本であってもフィリピンであっても世界のどこであっても私たちが関わるのはそこにいる人間で、「国際協力」などというたいそうな看板を持ってきてもそれは変わらないのではないかという思いがあったからである。研修後、もう一つ変わったことがあるので最後に書きたい。自分の狭い部屋の片隅に段ボールをおいたことである。そこにはフィリピンでもらった資料、研修中に書いたメモ帳、写真が入っている。別に深い意味はないが、もし今後フィリピンで浮かんだ様々な疑問に対して少しでも答えに近付けるような経験ができたら、そのことを書いてまた箱に入れたいと思っている。いつか箱がいっぱいになったら整理して報告書でも書こうかと思う。

最後にこのフェローシップに関わってくださった先生方、財団の方々に感謝いたします。特にバブさん、山田さん、永井さんには日本に帰ってきてからもいろいろとお世話になっているので特に感謝しています。そしてフィリピンで欠かすことのできなかったビール、マンゴージュース。ありがとう。ラブワゴン、ありがとう…ん!?。

おしまい。

東京にて。フィリピンを懐かしみながら…。

 

 

 

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