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3月16日(木) ―午前

 

○本日のスケジュール・内容

 

○フィリピン大学(UP)訪問

University of the Philippines医学部を訪問しました。まず医学部の校舎で大学の歴史や概要についてビデオを見ながら説明を受けました。それによるとこの医学部は1907年に設立され、1910年にフィリピン大学(以下UPと略す)に統合されました。このころは内科と外科しかありませんでしたが、1920年には衛生学なども教えるようになりました。第2次世界大戦で授業は中断され、校舎も日本軍によって破壊されました。

医学部は、高校を卒業してすぐ入学するコースと、いったん大学の理学部を卒業して編入するコースがあります。高卒のコースは、定員40名(男女各20名)で7年制、学士入学のコースは、定員120名で、3年次に編入され5年制です。学費は半期で11,500ペソですが、私立の医学部はこの4倍はするそうで、お金持ちの子弟しか通うことはできないようです。授業は6月から10月までが前期で、11月から3月までが後期です。ただし、5年生は病院内で10ヶ月休みなしで勉強するそうです。5年前までは卒業生のうち30%がアメリカに行って医師となっています。残りのほとんどの学生は専門医となりますが、少しの学生は地域医療に従事しています。(最近は結構人気がでている)

説明を受けた後で、医学部の学生が私たちを医学部内にあるPGH(フィリピン総合病院)に案内してくれました。この病院は日本での大学病院として機能しており、治療費が無料のセクションと有料のセクションに分かれていました。治療費無料のセクションは、患者さんでごった返していました。ここは“first come、first served”という方針で来た人から順番に治療していき、予約はできないので、朝5時くらいから受付前に並ぶ患者さん(またはその家族)もいるそうです。受付では初診の患者さんを各科に振り分ける(トリアージという)のですが、学生もそのスタッフの一員となっていました。

治療費無料のセクションでは、診察代は無料ですが、薬品やシリンジなどの代金は払わないといけません。(ただし、患者の経済状態に合わせて治療費に対して補助してもらえるそうです)救急外来や小児科の病棟を見せてもらいましたが、救急外来では多くの患者さんがステンレスのベッドに寝かされて診察を待っていましたし、小児科の病棟は、体育館のような大きな部屋に2列に子供用のベッドがずらっと並んでいるだけで、お世辞にも良い環境と言えるものではありませんでした。しかし、小児科の病棟では、小児神経医が研修医と3、4年の学生に対してベッドサイドでCTの読み方を教えていました。(このあとで研修医が学生に医師の説明の難しい点を教えるそうです)このように、学生は日本の大学よりも実戦的な教育を受けていて羨ましく感じられました。

有料のセクションは、pay (patient) wardと呼ばれ、ベッド代を一日400ペソ払わないといけないし(それでも私立の病院よりは安いのですが)、診察代をはじめ、全ての費用を払わないといけません。ここの病棟は、病室がきちんと部屋で仕切られていて、日本の病院と同じような雰囲気でした。

 

 

 

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