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具体的にどういった症状がみられるかといいますと、神経が高ぶって、夜寝ていても何度も目を覚ます。一方で被害体験を忘れようとする意識が働くのか、無感情あるいは感情が麻痺したように鈍感になる。またそのために周囲を避けるようにするなどのことが起こってきます。

その反面、その時の体験が無意識のうちに何度もよみがえってきて、恐怖症状やパニック、時には他への攻撃性などが生じてくることいわれます。

不安、不眠、抑うつなどの症状を伴うことがまれではなく、自殺念慮が現れることもよくあります。自律神経症状がみられることもあります。

経過は動揺しながら大多数の症例では回復が期待できるといいますが、他のストレス障害よりは経過が長引くこともあるようです。

治療的には心理カウンセリングなどを主体に、時間をかけて専門的に行うことになりますが、その具体的なことは省略します。

最近は、労働災害認定事案にこのPTSDがあがってくることが時々あります。

そのことをどうこういうわけではないのですが、どうもこの心的外傷というのが拡大解釈されるような傾向がみられるという問題があります。

何か精神的なショックがあった。その後から身体の不調や精神的に不安定になったから、PTSDだというような簡単なレベルでの診断ではなく、より慎重な専門的検討が必要だということになります。

ある女性の職員が、仕事でいった訪問先で突然レイプされそうになったり、首をしめられたりなどの出来事の後で起こってきた精神症状に対して、労働災害と認定した例があります。一方でいわれのないことで上司からしっ責を受けたなどのことで起こってきた症状については、当然のことですが、この診断はつかないわけです。これは診断上のことであって、労働災害とするかどうかという問題とは直接の関係はありません。

簡単にいえば、やはり生死に関係するような突発的な出来事や体験をきっかけに起こってきた病態というのが番分かりやすいかもしれません。

 

 

 

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