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また事実、これは社会的にも労働災害認定の上でも様々な問題を提起しています。

第2巻「6 精神的不健康の分類」のところで述べました、ICD10によるこの診断名の定義を抜き書きして、少し平易に説明してみます。

殆んどの人に大きな苦悩を引き起こすような、普通では直面することのない生死にかかわるような出来事或は状況に出会い、言い換えればそれが強度のストレスとなって起こす反応ということができ、重度のストレス反応の一つのタイプとされています。このような出来事というのは極めて多くのことが考えられます。例えば、地震や洪水などの自然の大災害、火事や交通事故などを含む激しい事故や他人の変死に直面したり目撃したりする。また個人的に拷問やテロに巻き込まれる。強姦あるいはその他の犯罪の犠牲者になるなどがあります。職場のいじめやセクシュアル・ハラスメントなどもそうだといって訴えてくる場合すらあります。心的外傷とは、最近になっていわれ始めたことではなくて、以前からこの考え方があったのですが、これによって現れてくる症状をとらえて、一つの診断にしたということでしょう。

心的外傷という言葉は、素人でも何となくニュアンスとしては分かると思います。個人が、自分の気持ちの中で処理し、対応できないほどの強い刺激的あるいは打撃的な体験が与えられることとされており、PTSDという考えの中ではそれを具体的に生死にかかわるような体験と表現しているということになります。例を挙げればきりがありませんが、社会的なものでは、兵庫県の大地震、噴火による被害、航空機事故、長期間の監禁、誘拐などがこれを引き起こしているといわれています。他に多いのはやはりレイプを合む身体に危害を加えられたこと、身内が犯罪や事故で死亡したなどという例のようです。

このような体験をしてから数週間ないし数ヶ月後に発症することがほとんどで、六ヶ月以上経ってから発症するのはまれであるといわれています。

 

 

 

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