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また、海外勤務をしていた職員が、心身の不調をきたしたのは、意に反して、生活環境の悪いところへ赴任させられたからで、労働災害に当たるといってきたことがあります。しかしこれも、客観的には、気侯その他の環境条件は決して悪くはなく、職場の雰囲気もいいし、仕事量も適正なものであって、結局、本人の発症は環境のせいとか、いじめなどと直接関係はないと判断した例があります。

なぜ、最初にこのような例を挙げたかといいますと、いじめの問題は事実関係の確認が困難なことが少なくないからであるということです。また本人がいじめと感じていても、相手の方に、そういう認識や自覚、つまりいじめているというつもりは全くないということも少なくありません。

このようないじめているとされる例で、相手方にいじめているという自覚のないことが一つの大きな問題となってくることがあります。

また、それをどう受け止めるかという相手側の感じ方もあるわけです。セクシュアル・ハラスメントにしても、同じ出来事をセクシュアル・ハラスメントと感じる人もいるでしょうし、大して気にしない人もいるかもしれません。もちろん、ここではそのことのいい悪いをいっているわけではありませんが。

そこで、一般的なことに戻って、上司が部下に対するいじめ、同僚間のいじめということが考えられますが、最近では、部下が上司をいじめるというようなことも全くないわけではなさそうです。カウンセリング・マインドという命題からいえば、上司が部下に対してのいじめということが一番大きく取り上げられるのでしょうが、少し広く考えてみることにしたいと思います。

それでは、具体的に職場の中でどういういじめが行われるのかということになりますが、学校内でのいじめなどとは違って、物を隠されたとか、直接身体的に何かされたというようなことは、ほとんどないかと思います。それだけに陰湿ないじめということもいえるかもしれません。

このようないじめの本質がどこにあるかということになりますと、特に大人の社会の中ではそう単純にはいいきれません。

 

 

 

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