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1 職場のいじめについて

 

世間では、特に学校での生徒間のいじめや、そによって起こってくる不幸な出来事について、テレビや新聞が大きく取り上げ、一般の関心も深まり、種々の対策についても各方面で検討されています。一般の社会でも仲間はずれや無視をするといったいじめと考えていいようなことがあります。実はどんな社会でもいじめというのは、人間が生活している限りあるものかもしれません。それは大きくいえば、国と国との間にもあるでしょうし、また動物の世界にもあるともいいます。

職場という社会の中でのいじめというのも、実は昔からあったのだと思われます。

このごろ職場のいじめの代表的なものといわれているセクシュアル・ハラスメントにしても、別に最近始まったことではないと思います。

そこでセクシュアル・ハラスメントやその他の職場のいじめということについて、少し考えてみたいのですが、セクシュアル・ハラスメントについては、第4巻に詳しく述べられることになるので、それ以外のことについて取り挙げてみようと思います。

当たり前のことですが、「いじめ」ということになると、いじめる者といじめられる者があります。具体的ないじめそのものも問題ですが、その中の人間関係というのが、なかなか難しいといえます。「いじめ」ということについては、いじめる方が悪いというのは当然なのでしょうが、いじめる者といじめられる者という関係は必ずしも単純なものでもないのです。

初めに少し特異な例を挙げておきますが、ある職員が、職場で他の人たちに冷たい目で見られる、仕事に協力してくれない、年次休暇を取りたくても上司がいい顔をしない、取らせてくれない。そのために自律神経失調症のような状態になったと訴えてきたことがあります。ところがいろいろと調査をしてみたところ、全くそういう事実はなく、それはその職員の被害妄想であったという極端な事例があります。はっきりいえば、精神分裂病の症状だったということです。

 

 

 

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