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そこで、何よりもそういう状態にならないように予防することがもっとも大切なことですが、狭義の精神疾患といわれる群では、環境要因が主たる要因とは考えにくいので、どう周囲が配慮しても適切な予防策をとるというのは困難なことが多いわけです。一方、ストレスが関係しているものや心因性とされる群では、職場のストレス対策を含めたメンタルヘルスヘの取り組みが充実していれば、ある程度は防ぐことができます。具体的にはどうするかは既に述べたことを見てください。また第3巻「6 精神疾患と労働災害」のところも参考になるかもしれません。ただ、そうはいっても、やはり本人の素因−性格の問題も本人自身の心構えの問題もありますのでどうしたからといって100%防げるものでもないのは当然ともいえます。

そこで次に考えなければいけないことは早くその兆しや現れを発見して対策を考えるということになります。ある程度、不調の様子や不適応の状態がはっきりしてくれば、周囲の者は気が付きます。これも最初のうち本人が何となく不調を感じていても口に出さなかったり遠慮していわない時や、普段の状況では周囲が見過ごすということも、いくらでもあることです。前に述べた、周囲から見てどういう点に注意するかということなどを参考にしてみていただくしかないのですが周囲の人たちにしても余りそういう目でみるのはと考えてしまったりしますので、口でいう程簡単でないことも事実ではあります。

正常かそうでないかの判断は世間の常識で判断するというようなこともいいましたが、実際にあった極端な例ですが、某職場の三十才前後の女子職員が、一、二の同僚の男性職員から好意を持たれていると他の同僚に打ち明け、そういうこともあるかと聞き流していたら、実は全くそういう事実はなく、妄想だったということがありました。これは後になって、もっとはっきりした精神分裂病症状が出現して入院したのですが、はじめは全く分からなかったといいます。余談ですが、これは恋愛妄想といって、自分が他人の男性から愛されているという思い込みを持つことです。

 

 

 

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