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時間の許すかぎり、相手のいうことをよく聞いてやる、話したいだけ話をさせるということになるでしょうか。日々の業務にそれぞれが忙しい中ではなかなか困難なことも多いとは思いますが、話を聞いてもらったということだけでもカウンセリングとしての効果はあるとよくいいます。ですから上司としては、余り構えてしまわないこと、少なくとも最初から自分の意見や考え方を表に出してしまわない方がよさそうです。結論が出るか出ないかはこの次と考えてもいいのではないかと思います。精神科臨床の場面でも、明らかな精神疾患は別として、日常生活における自分の不満や愚痴などを、長々と訴えてくる人がいます。正直なところ、精神科の診療はカウンセリング主体とはいえないので、時間的に何かと困ることもあるのですが、可能な限りゆっくり話を聞くとそれだけで納得して帰っていく、大げさにいえば治療効果があったと考えられる例は少なくもありません。

このような対応が結局カウンセリング・マインドにつながるものなのでしょう。

ただ一方で、すべてがそれで解決できるわけではありません。上司としてはすべてを自分で抱え込んでしまうことは、親切なようでいて、結果はマイナスになることさえあります。カウンセリング・マインドというのは親切だということと同じではないのだと思います。相談室のところでまたふれますが、必要な他の方面への相談ということも大切でしょう。特に家庭的な問題や、自分の健康上の問題などを抱えている職員からの相談では、適切な指示と対応が必要になります。

職場不適応を出さないための上司の役割が重要である。カウンセリング・マインドでといっても、それで対応できない場合があります。これはむしろ二次介入のところで述べますが、性格に問題のあるケースや、精神疾患が疑われる例では、無理な例もあります。ストレス対策で予防できない精神疾患等の場合があるということになります。

カウンセリング・マインドがいらないとか、無駄だというのではなく、別の適切な対応を考えなければということです。

 

 

 

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