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【海上保安庁の国際関係業務の概観】

 

総務部国際・危機管理官国際係長

川越功一

 

はじめに

海上保安庁は、昭和25年5月の創設以来、海上における様々な活動・事象を対象として日夜業務に励んでいる。海上における活動・事象は、海上で行われ、また、発生するがゆえに、近隣国の関係政府機関、外国船舶、外国人等が様々な形態で関与し、干渉し合う性質のものである。この結果、時には、二国間の外交問題に発展することがこれまでもしばしばあった。また、一国の海上保安機関による対応ではなく、地域の海上保安機関が共同で対処することがより効果的である場合も少なくなかった。そのような状況の中で、海上保安庁が適切に業務を遂行していくためには、我が国の相対的な国際関係における位置付け、国際的な政治・経済の状況や見通しなどについて十分留意する必要があることは論を待たない。また、同じ問題を抱える国のカウンターパート機関と連携・協力してそれらの活動・事象に対処することの必要性も高まっている。

最近においては、グローバル化が急速に進展したことにより、国際犯罪の増加等そのマイナス部分の影響が見過ごすことができない状況になっている。このような問題は、一国の一機関が単独で対応することにより解決できるものではなく、同じ問題を抱える近隣国等の海上保安機関が、その地域の安定した秩序維持のため、積極的に連携・協力して対処すべき問題である。

更に、海上保安の様々な分野で、関係国が共同して、又は、調整をとりつつ同一又は類似のシステムを運用したり、国際機関の一員として共同で調査研究を行ったり、また、人道的な観点から、大規模地震等の災害発生国に救助チームを派遣する等、国際社会の一構成員として近隣諸国等とのかかわり合いの中で業務を実施する機会が増加している。

 

 

 

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